朝戸風のように君の馴染み深い存在になりたい ページ30
目覚めると、知らない天井が見えた。前に見たレンジャーたちが集う場所じゃなくて、本当に知らない場所。
体に組み敷かれている何かによって、起き上がることすらままならない。一体どういうことか、確か魈と話してて無意識に歩き回ったから疲れて眠ったはず。
「……ん?起きた?おはよう、本当に君の寝顔はいつ見ても可愛いね」
わあー!!
何でいるんだ、何でわたしと寝てるんだ、困惑しかない!それより、顔が熱くなって仕方が無い。大声も上げてしまって、逃げようと思った。
「朝から元気だね。ほら、一緒に寝てただけだよ」
それが問題なんだよ、誤解を招きかねない言葉だ。だけど、誤解されたままで良い……って、何を考えてるの!
「悩んでるよね、ボクがこんなことしているからって。どうしてかな、ボクは四六時中毎日ずっと一緒にいたいのにね。何で受け止めてくれないんだろうね。本当は一緒に旅をしたい、そしてこの世界が案外悪くないんだよって教えてあげたい」
やっぱり怖い。この前のファデュイもそうで、人間が怖い。怖くない人がいるって知ってるけど、それでもやっぱり怖い。わたしの角と羽は人間にもぎ取られたから、トラウマがまだあるのかもしれない。
「ちょっと正座して、ボクも座る」
急にベッドの上で座るように言われて、腕から解放される。正座なるものを見様見真似ですると、真ん前にウェンティが膝を突き合わせてくる勢いで正座した。よく見たら、彼の服は薄着だしわたしも薄着だ。下手したら、事後と思われるレベル。
「人間は確かに愚鈍だけど、成長している。あの短い年月の中でも、必死に頑張っているんだ。ボクたちは見守る役目もある。もちろん、Aもその対象だよ。だけど、他の誰でもない君は情人でいて欲しい。そして、ボクだけを見て欲しいんだ」
顔をすらりと撫でる。恍惚じみた眼差しに見詰められ、余計に心が落ち着かない。だって、すごく意識する相手で心臓が痛い程に反応している。
「好きだよ、千年以上も同じ気持ちだったんだ。永遠に好きでいる自信はあるよ」
初めてはっきり言われると、心臓がパンクしそうだ。だけど、言われたかったのかな。ちょっと恥ずかしいけど、思わず顔が緩んで頷いた。
「わあ、嬉しい……じゃあ、これからいっぱい愛し合おうね」
急に抱きついてきて、ベッドに倒れ込む。間近にウェンティがいて、唇を柔らかく指先で撫でてくる。別にこのままキスされても良いと思って、彼からの口付けを受け入れた。
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