家風と共に君を待ちたいんだ ページ28
「Aを見てくれてありがとう。おかげさまで、変な人につけ回されなくて済んだよ」
「何故、彼女から敢えて目を離していた。溺愛する存在を丁寧に扱わぬのは何故か」
今までふらふらしていたAの元に現れると、すっかり眠りこけていた。凭れかかる相手はあの仙人で、満更でも無さそうな表情をしている。
「ドラゴンスパインにいなかった理由はボクだと思う。顔合わせしちゃったら、逃げると思うしさ」
「酷な言動をしたのか、理由次第では如何なるか分からぬぞ」
「酷いことしてないから大丈夫、好きな子には紳士的だよ」
ちょっとからかうけど、基本的には変なことはしない。人前で言えないことはちょっとしてるけど、それは愛故だから許してね。
しかし、目の前の仙人は未だに険しい顔。元からこの表情だったね、ごめんね。
「察しはついたが、そうであれば尚更だろう」
「ダメだよ、ボクは千年前からずっとアピールしてたんだよ?だから、Aからの照れ臭そうでそれでも真剣でもじもじした様子を眺めながら、ずっと待ち望んでいた言葉を聞きたいんだもの」
ボクのこと、ようやく意識してくれたんだ。嬉しくてここ最近は有頂天、いつになったらボクに愛を告げてくるのかな。シンプルかな、遠回しかな。どっちも捨てがたい、そんな魅力が彼女にはあるから。
生憎、仙人である君に譲る気は無い。ボクがずっと狙ってた、愛おしい人の子であり非人類でもある子だから。
「さあ、その子をこっちに委ねて?ボクがちゃんと家に送るから」
「……我が送る、不要だ」
「ええー頑固だなあ、もう。友人どうし、そんなとこ似なくたって良いじゃん」
彼女の頑固も彼と時々付き合ったせいで、移っちゃったのかな。それはそれで、全然嬉しくないけども。
「別に変なことはしないよ、今は」
「余計な言葉が聞こえたぞ」
「だって、好きになるってことは下心があるってことじゃない?だから、許してもらえない内は我慢するんだ」
でも、我慢できないから、彼女に対していかがわしいことはしちゃっている。しょうがないよね、そういう感情のせいだから。
「ところで、いつまで彼女の手を握っているんだい?離れたくないってことかい?」
「!?気のせいだ、我はその感情など一つも無い……」
その割には、驚いたし放したがらないし。無意識と愛着って恐ろしいね。
「さあ、放して。好きな子と永遠に触れ合いたい気持ちは分かるけど」
「……」
「何でボクを睨むんだい?」
「……他意は無い」
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