名残と薫風 ページ24
倒れるAの前に立ち、ファデュイの連中に弓の先を向ける。部が悪い所だけど、彼女を守れずに何が傍にいれるんだ。大丈夫、一応援軍は来る予定だから。
「これでも神様だから、祟り殺すつもりで容赦しない」
ぎっと彼らを睨み付けると、少し怯んだ様子が見えた。ぎりぎりと腕に力を込め、指先に弓矢の先の近くに添える。その間にも攻撃が飛んでくるので、さっと後ろや横に体を飛ばす。
「クソっ!何だこのガキ!」
「さっきのガキよりすばしっこい!全然当たんねえ!」
風元素の力が込められた矢先の標準を定め、青くて図体のデカい男に当てる。水元素を纏い出したタイミングだったからか、横にいた銃を持つ男にもその勢いは当たった。そちらも火元素を纏い出した瞬間だったので、沈静化された。
「うわっ!何してんだよ!」
「知らねえよ!お前のタイミングなんざ!」
「まだまだ!一緒に遊ぼうよ!」
仲間割れがあり、その隙を狙って高天の歌を発動させる。一気に周りの敵性たちの足が舞ってボクも宙を舞う。近くで気絶した彼女も舞ったので、そっと抱き寄せた。そして向こうがボクたちの姿を見失っている隙に、地の底から体の中へと集中して元素を巻き集める。そして、空いている片手で大きく振りかぶって風の元素を爆発させる。
「風だー!!その怖さを思い知るが良いよ!」
広範囲の風域を作り出し、未だにてんてこまいな様子の男たちの纏う元素力を利用してダメージを与える。うめき声や断末魔が豪風の中に僅かに聞こえる。
「助太刀、しなくて良いか」
「Aを傷付けたことは重罪だ、償ってもらうぞ」
「もー来るのが遅いよー」
風が止んだ頃、倒れているファデュイ共しか見えなかった。その彼らをまとめて縛り上げているのは、レンジャー長と大マハマトラ。特に後者の方が妙に怒気を含んでいる。理由は分かる、ボクだって怒りが治まらないから。
「簡素なSOS発信しかしなかったから、ちょっと手間取ったんだよ」
「そう?ちゃんと示したけど」
「教令院からサポーターを呼んでいる、数分後には輩共を残らず連行する」
さすがお仕事を毎日テキパキこなして、空いている時間にAに逢いに来ているだけはある。こっちは見ていてつまらないし、今回の騒動も元を辿れば彼が原因だ。
「ウェンティ、Aを連れて来てくれ。看病しなきゃいけないんだ」
コレイが遅れて来て、彼女の看病を申し出た。その言葉に甘えながら、横抱きにした彼女を連れて緑の少女の後を追った。
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