すり抜けていく霜風は誰かを嘲笑う ページ23
セノが相変わらずやって来て、その度にカードゲームの遊び方をレクチャーしてくる。自分はよく分からないので、それに従っている。横でウェンティは、わたしたちの様子をつーんとした眼差しで見てくる。
でも、個人的にはセノに感謝しながらカードを眺めていた。だって、ウェンティと2人きりは心臓に悪そうだったから。生まれて初めてこんな感じになった。
翌朝、1人で目覚める。涼しい朝で、洞窟内は静かで心地が良い。朝ごはんを食べようと、稲妻で買った竹葉に包まれたおにぎりに手を伸ばす。硬すぎる感触が手に伝う。何だこれと掴んで見てみると、見覚えのある長方形の立体。あ、これ、セノのカードケースだ。これって大事にしているとか昨日熱弁してた。何故か知らないけど、わたしが一番大事で大好きな人とも付け加えていた。そこまで言わなくても。
おにぎりを食べながら、ドラゴンスパインから出る。片手にはカードケースを持って、スメールへ向かう。
「その為に俺に逢いに来てくれたのか?ああ、ありがたい」
スメールの大きな街が分からずにふらふらしていたら、用事から帰って来る最中のセノと出会した。彼にカードケースを渡したら、赤い眼差しが輝いたような気がしたが無表情で分かりにくい。彼から代わりに袋を渡されたが、じゃらじゃらと何か金属の擦れ合う音が聞こえたので返却しようとした。しかし、同じ押し問答が繰り返されて結局受け取ることになった。
「その……俺も彼みたく、Aを抱きしめて良いだろうか?」
唐突過ぎて驚いたが、少し苦い笑顔を浮かべながら挨拶も程々にそそくさと去った。じゃらじゃらと鳴る袋と共に、複雑な心境だった。知らない場所を無我夢中で走り続ける。
「おい、金になる物を持ってんだろ?寄越せ!」
「ボーナスダウンしたからな、それくらいねーとだわ」
突然、赤や青や黄の大男たちに囲まれる。衣装からしてファデュイだと気付くも、急に攻撃をしかけてきた。避けながら、法器を取り出して元素を捻り出して相手の攻撃と相殺させる。
相手が多すぎるせいで、四方八方と攻撃が当たり続ける。痛いよ、怖いよ、どうなっちゃうの?
「このガキ、見覚えがあるな?」
「思い出したぞ。雪山に住まう龍の娘だ。にしても、普通のガキだな」
地面に伏せたぼろぼろのわたしに手を伸ばしてくる。
薄くなる視界の中で、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「ダメだよ、ボクの大事な人をイジメたら。君たちにも痛い目に遭ってもらうよ」
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