君と感じる小夜風 ページ22
未だにウェンティと共に、モンドの港で降りた。気が気じゃない中でも、彼はぴったりとくっ付いて、魔物も人目も無い状態で帰って来た。
ドラゴンスパインに戻って持ち物確認をしていると、桜の花がしなびていた。ここは寒しい、花の生育環境には良くない。どうしようかと悩んでいると、彼はどこからか本を取り出してまだ元気そうな桜の花を摘んだ。
「押し花だよ、長い時間も綺麗な形で保てるんだ」
本の中に挟まれている二枚の紙片の間に、そっと入れ込んだ。そのままぱたんと本を閉じ、わたしに対してにこりと微笑みかける。本をしまった瞬間、わたしに向いて近寄って来る。さっきのこともあるので、何とも言えない気持ちで勢いよく下がる。それでもむこうは近寄って来る。
「もう、恥ずかしがらなくたって……悲しいよ？」
悲しいそうな表情で、しゅんとしだす。お得意の演技でもしているんだろうと見ていたが、未だにめそめそしている。ちょっと気になったが、のったら思う壺だと踏ん張る。
「……やっぱり、ダメかな？ボクは信用に足らない存在？」
その言葉に反応してしまった。そこまでじゃないと伝えながら、おそるおそる近寄る。
「そっか、じゃあ期待して良いんだよね」
急に顔を上げて、満面の笑みでわたしに飛び付く。唐突で避けきれず、真正面から受け止めることになった。驚いたのも束の間、彼は力任せのようにぎゅうぎゅう抱き締めてくる。
「ずっとこうしていたいな、Aの温度や存在を感じたまま。それって、とっても贅沢で素敵なことなんだ」
黒髪が顔に当たるが、そんなのお構いなしに更に体を密着させるように抱き締めてくる。もうキツイ、目が回る。
「ねえ、ボクをどう思っている？旧友？飲兵衛？神様？それとも―――ボクと同じことを想ってくれているのかな？」
全部該当項目だけど、最後だけが何となく感じ取れる相手からの感情で顔が熱くなる。まさか、まさか、そんなことない、わたしは……。
「風神であり俺の想い人の旧友のウェンティ、何故彼女に抱擁と誘惑をしている」
「ありゃ、邪魔が入っちゃった」
「宣戦布告のようだが、良いだろう。受けて立つ」
「え、ボクって七神の中だと最弱なんだけど……」
突如現れたセノは、槍をどこからか出現させて戦いの姿勢に入った。
一方ウェンティは、わたしを今度は横抱きにした。近くの崖からそのまま飛び降りた。風の翼が彼の背中から出て来たけど、こっちはさっきのことで軽くパニックを起こしていた。
すり抜けていく霜風は誰かを嘲笑う→←きっと至軽風の方が慣れているから
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