颶風な心情を癒して欲しい ページ19
平蔵に引っ張られる形で、稲妻の街中を歩く。周りの目線を受けているようで、気が気じゃない。
「疲れた?お茶でも飲むかい?」
彼に少し弄られた竹筒を渡され、ぼうっと眺める。上に小さな穴があるがどういうことなのか。
「飲み方が分からないかい?その穴に口を付けるんだ」
よく分からないので言われるがままに口付ける。傾けるような動作をしたので、傾けて飲み始める。
「どうだい?美味しいだろう?」
ちょっと苦いお茶だった。いつも向こうで飲んでいる紅茶とは違う感じで、多分味的に緑茶だと気付く。昔、ウェンティにそんなお茶を飲んだと教えてもらったから何となくだが。それを平蔵に伝えると、にこにこした。
「ピンポーン、正解。むこうは紅茶ばっかりでしょ?こういうお茶も新鮮に感じるんじゃないの?」
確かにそうだ、水とかウェンティが持って来た茶葉での紅茶くらいしかない。
「どれを見せても面白い反応をするから、見ていてとても楽しいよ」
「ふむ。そのような心情にさせる異性と出歩く、かの名探偵殿がいたのは本当だったのでござるな」
「おや、盗み見と盗み聞きかい?感心しないね、浪人さん」
目の前に突然現れたのは、下方に髪を結ったクリーム色なような髪を持つ青年だった。彼はわたしたちを見て、少し微笑ましそうにしている。
「そうではない、噂がここまで聞こえた故に」
「助手候補だしね、仲が良いのは当たり前だよ」
「彼女を紹介して欲しいが、構わないだろうか」
大した名前でもないし、名乗っておく。犯罪ごとに使われなきゃ大丈夫。セノが一回だけ、勝手に婚姻届にわたしの名前を書こうとしていたから、大慌てでとめたけど。
「ふむ、良い名前だ。いかにも可憐な女性と見て取れる。名は体を表すとはこのこと」
やけにわたしを褒める浪人。恥ずかしいからやめて欲しい、だって旧友のトワリンやウェンティですらわたしの名前を誉めなかったから。むしろ、閉じこもりの困ったちゃんとしてしか見られていない。だってトワリンにも「もう少し外の世界を知れば、より良く感じられる筈だ」とか言われたもん。
「A、照れてるの?可愛い顔だけど、僕としては複雑だよ」
「不服であったか?すまない、あまり良い言い回しが分からぬでごさる……」
「本心からの言葉であったが、そのまま真っ直ぐ伝えるべきでは無かったでござる」と続けられて、恥ずかしくて顔から火が出そうになる。この浪人といると心臓がもたないからやめて欲しい!
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