風雷の狭間でもきっと ページ17
気が付くと、知らない砂浜にいた。どうしてこうなったんだろうと思いつつ、濡れている衣服を絞ったり顔についていた砂と塩水を素手で払う。
思い出した、ウェンティがドラゴンスパインの寒海でイカダを作っていたからふざけて乗ったんだ。そしたら、急に風元素の力を使ってドラゴンスパインから離れていたんだ。そして、気付いたら知らない青い空と海を越えてここにいた。途中でイカダが壊れたから、そのウェンティとは離れ離れになった。
「おや、見ない顔だね」
またまた突然、紅海老茶色の髪と目の色をした少年がわたしの顔を覗き込んでいた。彼はにこにこして、じっと見ている。知らない人で困惑していると、彼はくすくす笑って言った。
「面白い反応だ、名前を聞かせてくれないかい？風元素を操れる方？」
わたしの腰からぶら下がっていた風の神の目を見られたが、彼の腰からも同じ色の神の目がぶら下がっていると気付いた。
観念して、名前を名乗る。知らない所だし、少しでも情報が欲しいから。
「良い子だね、じゃあこっちも名前を教えよう。二進も三進も行かない相手に対して、平等性に欠けるからね。鹿野院平蔵さ、以後は末長くよろしく」
どこか掴みどころの無い笑顔に、長い付き合いの神様を思い出す。どうして彼は、こういう人にばっかり神の目を与えるのだろうか。旧友を心の中で咎めていると、彼はわたしをじいっと釘付けになったように見ている。恥ずかしいので後ずされば、彼までも付いてくる。
「見たところ、モンドからわざわざ大海を跨いで来たのかい？衣装もそちらの土地のようだし、濡れているということは船などが大破して難破に遭ったんだろうね。あの海域は昔と比べると大分マシになったけど時々怪しくなるから、注意した方が良いよ」
長々とわたしの境遇をぴたりと言い当てる少年に対して、不気味な気持ちを抱いていると片目をぱちっと茶目っ気溢れて閉ざした。
「後はAをここに連れて来た張本人が現れるまで一人孤独と恐怖に耐えかねて待つか……何なら、探すついでにこの他称でもある名探偵に付いて行くかい？」
言いかねている意味が分かりません。前者はわたしの今の状況だけども、後者の言葉の並びがよく分からない。名探偵って誰のことだろう。風のように掴み所が見えない少年といたいと思えないが、緊急事態なのも事実。だって、櫻の木がちらほら遠くに見えるから、イヤな予感が肌をびりびり駆け巡る。
まさか、雷神様が統治する場所じゃないよね。
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