台風並みの仰々しさを漂わせる ページ15
「ちょっと、君って案外身の程知らずじゃないかな……ボクの旧友にさ、勝手に手を出そうとして」
この中で一番先に声を上げたのはウェンティだった。若干慌てたような声色だったが、後々はいつもの穏やかな口調で続ける。
しかし、セノと名乗った少年とも青年ともとれるような背丈の人は一切怯まずに彼の言葉を聞いていた。
「そうなのか、Aの友人なのだな。是非ともウェンティとも仲良くしておきたい」
「……君って結構肝が据わっているよね」
「?ダメなのか」
セノはウェンティに近寄り、片手を差し出した。まるで握手を求めているようで、ウェンティは少し気乗りしないような様子で握手を交わしていた。
「Aとの交際は認めないよ、彼女は―――まあ、人間とは相性が悪い所が有るし」
ウェンティがわたしの保護者じゃないのは確かなので、認めようが認められぬ状態であろうが無関係だ。神の目を貰ったのと旧知の仲と旧友なのは確かだ。
「そちらに認められぬとも、Aの意思が一番の重要項目だろう。返事を聞かせてくれないか」
何でそんな剛速球な会話を振って来るんだ。頭がごしゃごしゃになって、彼に対してそういう話はむりだと突きつけた。わたしみたいな半端者より、素敵な人間の相手が見付かる筈だ。本当に素敵な人は星の数程にいると思う。今までそういう優しい人にはちょくちょく出会ってきたから。でも悪い人の方が記憶にこびりついているから、そう思うのはおかしな話かもしれない。
セノはその言葉を振り払うように、わたしの前で跪いた。唐突の出来事と意味がくみ取れず、彼を困惑した眼差しでしか見れなかった。
「そうか、それでも構わない。前向きに検討してもらえないだろうか」
分からないことの連続で、わたしの前で懇願しているような少年の知り合いであろう獣耳の少年に向く。彼も少し驚いているようで、小さく目を見開いて、わたしたちを見ていた。
「ご、ごめん。こっちも初めて見たセノだから……どういう反応をすれば良いのか分からないんだ」
「私もだ……ごめんよ、A」
彼の知り合い2人もお手上げで、セノの言動を遠巻きで眺める。何でこういうことになっているのか、全然分からない。
「分かった、今日から毎日そちらに両者の時間の許す限り説得を試みよう」
「こっちは良くないよ、彼女ったらてんてこまいだよ」
「その様子まで愛いらしく感じる」
跪く動作はやめたけど、終始の仰々しさは消えなかったので気が休まらなかった。
23人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ