下風に翻弄されてしまいそうで ページ14
さっきまでウェンティと走っていた筈なのに、気が付くと一人になっていた。
ナヒーダと放浪者から逃げ出すようにしていたのに、雨林という複雑な林たちが生えている土地のせいではぐれた。なんてついていない。
「あ、あれ、迷子か?そうだ、あたしについて来ると良いよ」
わたしを見付けたのは、緑色の髪と横に浮かぶ謎の生物が目立つ少女。わたしと背丈は大して変わらない彼女に導かれるまま、人がいる集落へと連れて行かれる。少し怖いので、彼女にぴったりくっついて視線を避けた。彼女からは、「ちょ、ちょっと歩きにくいぞ……」と困ったような声で言われた。
「師匠、森の中で女の子が迷ってました」
「その衣装からして、モンドの人かい?ちょうど、ここにもそんな人がいるんだ」
「A!もう、どこ行ってたのさ!探している内に、ボクもここに連れて来られちゃってさ」
彼女に連れられた先には、頭に獣の耳を生やした少年と見覚えのある少年がいた。急に見覚えのある少年ことウェンティが近寄ってぎゅうっと抱き締めてくる。
「保護者、なのか?」
「ううん、旧友。ドラゴンスパインって雪山で閉じ籠ってるんだけど、いじりがいがあって照れ屋で時々若干憂い気なのも良くて、なかなか笑わないけど笑った時がとんでもなく―――あ、これ以上は言えないな。ボクとAだけの話だし」
「……べた惚れだね」
次第に名前の知らない少年少女の眼差しが、呆れたものに変わった。ウェンティに突っ込みを入れて、言葉を遮断させる。だって人の恥ずかしいことをべらべら喋る無神経さが分かんない、大量のヒルチャールにぼこぼこにされて欲しいくらいに殺意を覚えた。
「照れてるの?ふふふ、可愛いなあ」
「……夫婦漫才なら、他所でやってくれると嬉しいのだけど」
「さ、騒がれると困るぞ……」
彼らは気まずそうに、わたしたちを見ていた。恥ずかしくなったのでウェンティを連れて外に出ようとする。もうこんな思いになりたくないと、扉を開けようとした。
「ティナリ、今日は―――」
急に扉が開いて、上半身が裸に近い褐色肌の少年と会う。いきなりと、至近距離でダブル驚きで体が硬直する。
「ティナリ」
「何かな、セノ」
「彼女の名前を教えてくれないか」
そういえばとこの場の知らない人たちと自己紹介をした後、急に彼に真っ赤な瞳を向けられた。
「A、急で悪いが情人になってくれないか?もちろん婚姻前提だ」
何を言っているのか分からなくて、しばらく呆けた。
台風並みの仰々しさを漂わせる→←林の間を擦り抜ける雨風のように
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