林の間を擦り抜ける雨風のように ページ13
ウェンティに案内されて、スメールと言う名前の土地に来ていた。何で来ることになったのかと言えば、美味しいお酒を飲む為のリベンジとか何とか。こっちはあまり名前が知られていないので、大丈夫とかで……それは悪名がモンド内に広がっていると言う意味の裏返しかと変に勘繰る。
「んー美味しかったね」
もうモラがすっからかんだ。何でこの人の分まで払わなきゃいけないんだろうか、結局無銭飲食をしようとしていたから大急ぎで払っていた。本当に無銭飲食殿じゃないか。はあと溜め息を吐きつつ、森林の陰りがあれども、明るく心地良い中を潜る。ウェンティはわたしの手を掴んだまま、ずっと歩いている。連れ去られるがまま、どこに行くのか気になっていた。
「あら、風神様が何のご用かしら」
白銀のサイドテールが似合う少女が、わたしたちの前に現れた。随分と背が低くて、近寄ってしゃがんで目線を合わせた。
「ふふふ、貴方のお友達は好奇心が強いのね」
「Aー彼女は草神様で、ナヒーダだって」
「別に畏まることはないのよ?貴女を知りたいもの、教えてちょうだい?」
彼女はこちらに手を伸ばして来た。そして、頬にゆるりと触れる。ふわりと若草の心地よい香りが漂ってきて柔らかすぎる手の平が触れる。神様と言えども柔肌が強過ぎて、意識がそっちに持っていかれる。
「そう、Aね。龍の末裔で風神の友人、放浪者が言っていたわね」
思わず彼女が口にした言葉に気付いて、はっと我に返った。瞬間、わたしの背後に誰かが立つ気配がした。驚いて立ち上がって振り向くと、放浪者がいた。
「珍しいね、寒い所にいないだなんてさ」
「もう、声くらいかけなよ。彼女が驚いているよ」
「別にそこまでする筋合いは無いだろうし」
放浪者とウェンティが言い合いを始めた頃、ナヒーダが近寄って来た。彼女はちょいちょいと手招きをするような手付きだった。再びしゃがんで寄ると、くすくすと嬉しそうに耳打ちをしてきた。
「彼……ああ、放浪者の方ね。会う度に貴女のお話をしてくれるの。前までは特定の人物は旅人だけだったのけど、どういうことかしらね?」
本当に楽しそうな柔らかで穏やかな声。聞き入っていると、突然肩が揺れた。驚いて視界をぐるぐるさせていると、放浪者がわたしを見ていた。そして、わたしを揺すっていたのは彼だった。
「何を話していたのかい」
「うふふ」
ナヒーダが笑うだけで、何も言わない。わたしも言わない方が良いのかなと、苦笑いをした。
下風に翻弄されてしまいそうで→←いつも見る雪風と同じくらいに
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