どんな時もあなたには優しい風が吹いている (ページ12)

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いつも見る雪風と同じくらいにページ12

目が覚めると、ウェンティがわたしの顔をじいっと覗き込んでいた。青緑色の綺麗な真ん丸な瞳で、ちょっと見惚れていた。

「朝からボクに熱烈なアイコンタクト？それは嬉しいよ、おはようA」

それより、何でわたしを組み敷いているんだ。結構力強くて、細い軟腕とは思えない。弓をひいているからか、そうなのか！？
色々思いを張り巡らせる中、彼は整った顔を近付けてきた。

「ねえ、最近ボクの付き合いが悪くないかな？目を離した隙にいなくなってるよ？別に責めるのも縛るつもりはないよ、自由を愛する神様のボクがAを縛る資格は無いんだから」

続けて、くすくす笑いながら「契約、永遠、正義、知恵等を重んじる神々とは違う。だけど、ボクの中の一番と自由を願う相手は君でもあるんだよ」と片手だけ空けてわたしの頬の輪郭をなぞる。柔らかで体温があるのかないのか分からない状態で、ちょっと謎めいている感覚。どうしてだろう、こうされるのが酷く懐かしくて自然とその手を包んでいた。

「ん……ボクね、Aに触ると温かくなれるんだ。手もだけど心もぽかぽかで、ずっと接触していたい。ほんとにほんとにほんとだよ？永遠を重んじる神様の思考になっている程だよ、君だけなんだよ。自由に離反する思考に走りつつあるんだよ」

彼の目が一瞬悲しそうになった。自分の意思とわたしに対する意思が合致しないと言いたいようで、その気持ちはいつも飄々としている様子とはかけ離れている。自分でも長年に連れ添ったので、それが強くひしひしと不自然な気配に覆われる。

「ふらふら行く君も素敵だよ、でもボクと―――ううん、これ以上は何でもない。ボクの心の中に閉まっておく。この想いをはっきり伝えたら、風で自由を愛する神様として失格になるから」

そう言いながら、わたしから離れていく。雪山の上に敷いた布地の上に座り直した。わたしの生活空間は、大方ここで完結している。近場に焚火の元もあれば、貯蔵している食べ物たちもある。モラは誰にも取られないように隠している。

「でもさ、手だけは握ってて。言ったでしょ、ボクの心と体も寒くない程に温かくさせる魔法みたいなものだから」

その言葉たちを吐く前から、ずっとわたしの手を握っているから意味が無いと思う。合意を得る前に先々しちゃう所は前からだなと思う。でも、心地よいのは事実だし彼が喜んでくれるなら笑顔を作る。あまり得意じゃないけど、はにかめばむこうもふにゃりと笑顔を作ってくれるから。