夕山風と埋まらない穏やかさ ページ11
わたしを除く三人並んで、話ができる場所でいた。遠い昔の話でやや盛り上がったり、甘雨と鍾離の質問に向けられたり、色々していた。ちょっと疲れたけど、それに相反せずに楽しかった。
お開きになり、その後は魈と2人でゆっくりそれぞれの住まう場所へと向かっていた。
「大丈夫か」
大丈夫と返事すると、彼は金色の眼差しを向けた。いつもの鋭い眼差しだが、敵意や深い他意が含まれていないと分かる。また無言になって、足音と踏みしめた物々が響く。
知り合ったのは数百年前で、その時はもう大警戒していた。しかし、彼自身も干渉を好まないのと程好い距離感で接することができたから長い間交友があった。
「そうか。我の知るお前は角や羽は無かったが、その時期があったのか。成程、故に甘雨をまじまじと眺めていたのか」
それ程彼女をまじまじと眺めていたそう。体型も両親の血をしっかり引き継いだ跡である頭の象徴もわたしにはもうないものばかりで。ないものねだりに等しい願望で、きっと呆れられてしまうだろう。
「自身に無き物を求めるのは、人間の性だ。そこまで気に病むことでは無い、Aの中には人の血が流れている故におかしなことではない」
相変わらず表情が変わらないので、どの感情で言っているのか分かりにくい。でも馬鹿にする時は馬鹿にしたような言葉の羅列だし、この場合は慰めていると分かるのでその気持ちと言葉を両方もらっておこう。友達の特権だ。
「友、か―――些か腑に落ちないが」
「あっ!やーっと見付けたよ、今までどこに行ってたの?またボクを置いて行ったの?前にも言ったよね、ボクも一緒に行きたいって?」
急にウェンティが気配を現さずにやって来た。驚いて肩が跳ねていたが、それは魈も同じようで小さく目をゆっくり見開いていた。
「そこの君は仙人か、雪でも食べに来たの?握り飯な要領で食べれるよね、美味しいんじゃない?ボクは食べたことはないけど」
少し怒ったような口調で、魈に目線を投げるウェンティ。趙は少しむっとしたような表情でウェンティを見詰め返した。
「間に合っている……友に逢いに来たのだ」
「ふーん、そう。へえ」
明らかに疑っている眼差しで魈を見ていたが、こちらに向いた瞬間ににこっと笑顔になった。
「これ以上はお互いに無益だからさ。さっ、帰ろっか?ボクとAだけでさ」
わたしの手を難なく取る神様。断るのと逃げる術を知らないせいで、されるがままだった。後ろから金色の視線を感じ続けた。
いつも見る雪風と同じくらいに→←夕風と見る遠くの複数の灯火たち
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