誰かの心の風巻 ページ1
大人の人たちがこっちに手をのばしてきた。
わたしのあたまにある、大きな大きなツノをさわってつぎはつよくなにかをたたきつける。
きゅうすぎてさけられなくて、当たっていたい、なみだが出てきた。
どうしてそんなことがするのかと大きなこえでいっても、その人たちはやめてくれない。
げらげらイヤなかおをして、わたしのあたまにあるツノへのこうげきをやめない。
「―――っははは、この角は高く売れるだろうな!」
「そうだな、これでたらふく飯を食ったり良い女を抱けたりするぞ!」
「こっちに寄越せ!」
もうやめて、ちかよらないで。
おれたツノをかくすためにあたまに手をおおって、かくれられるばしょににげる。
それでも、イヤな人たちは追いかける。
こわい、もうやめて、わたしのツノはもうない、やめて、追いかけないで、やめて、もうこれいじょうヒドイことしないで。
きがつくと手にものがあった。
なにかわからなかったけど、手からなにかが出てくるかんじがした。
なぜかきゅうに大きな風がまって、それをうけたイヤな人の1人はふっとんでいった。
「はっ!?何だ、あの龍のガキ!急に攻撃してきたぞ!」
「生意気なガキだ!殺しちまえ!」
のこされた人たちが、わたしにちかよってくる。
さっきのゲラゲラではなくて、すごくおこっている。
こわくて、目をつぶる。
きがつくと風がわたしから出て、大人たちのひめいがくらやみからきこえた。
ゆっくりこわさをかくしながら、目をあける。
そこには、大人たちがうごかなくなってじめんにころがっていた。
手の中にあるみどりのほうせきみたいなものが、きらきら光っている。
ほうせきはわらっているようで、でもわたしと大人をかこむようにべつの人たちがわたしをみた。
それはさっきまでわたしがかんじていたもので、それをたくさんうけた。
もうわたしはここにいてはいけないと、なんとなくかんじた。
「……へえ、それが本物の龍の血を引く君の運命かあ……うん、ありがとう。聞かせてくれて」
1人であるいていると、みどりいろのはねがはえたおとこのこにであった。
その人はわたしをこわがらなくて、さいごまではなしをきいた。
今までがとてもこわくてすごくさびしくて、きがつくとおとこのこのまえでないた。
「ボクは君をイジメないよ。いつも味方でいるし、泣いても変な目で見ないよ」
きっと、この人ならわたしをりかいしてくれるんだ。
はんぶん人間じゃないわたしが、はじめてそうおもった人だった。
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