【覚悟】 ページ5
─花京院Side─
花「ッ…！」
ピリ、とした痛みが指先に走った。ハッと視線を指に向けると、パキリと割れた指先から赤い雫が滴っているところだった。
花(…乾燥のせいで割れた、か？)
パタパタと血の落ちる指先に、言い知れない不安を覚えた。
─典明！
嬉しそうに僕の名前を呼ぶ君の声がなぜか頭をよぎる。
「花京院さん、イギーの処置はもうすぐ終わるそうです」
「お待たせしてしまいすみません」と言う財団の職員の方に「構わない」と返し、僕はまたAのことを考えた。指輪を渡した時の微笑み、そして、そのすぐ後に見せた不安の影。
花(大丈夫…必ず僕らならDIOを倒せるさ)
彼女に、そして、自分にも言い聞かせるように、僕は心の中でそう呟いた。
その数十分後、ホテルからAが攫われたことを知らされることを僕はまだ知らない。
─Your Side─
何をどうしたのか覚えていない。ただ、首筋に残る疼くような痛みだけが今この状況が夢ではないことを伝えていた。
『…。』
壁一面に這っている黒い茨は、私のスタンドなのだろうか。部屋には私以外は残されておらず、引き裂かれた壁紙やドレスの裾だけが起こったことをぼんやりと私に伝えていた。
(私は…)
零れ落ちてガラス片のようになってしまった、綺麗な緑を手に取った。
(私は…あの男と……)
泣きたくなるほどの絶望と共に、激しい怒りが押し寄せる。
(殺さなくてはいけない)
あの男を殺さなくてはいけない。それで自分が死ぬことになったとしても、私は『必ず』あの男を殺さなくてはいけない。
泣いている暇などないのだ。ここで泣きわめき、逃れられない『運命』に絶望して立ちすくむ私を許していいはずがない。
私は立ち上がった。
(わかる…この屋敷の中のことがわかる…)
壁から壁へ、天井から天井へ、這い進み、うごめく自分のスタンドが、今なら制御できる。頭が割れるほどに痛み、ともすれば吐いてしまいそうな情報量も、憎しみと怒りで制御し、理解できた。
(足は、もう痛まない)
立ち上がった。
邪魔なドレスを引きちぎり、私はドアに向かって手を伸ばす。
今ならわかる。何度も見た不吉な夢、あれはきっとこれから起こる無数の未来の可能性の内のひとつなのだ、とドレスの色を見た瞬間から、理解していた。
だとすれば、私はその未来の芽を摘まなければならない。
(もう恐れない)
あの夢と同じ廊下を、私は駆けだした。
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アリス(プロフ) - 続きがみたい...好きだわぁ (11月10日 10時) (
レス) @page6 id: e3fe7634b2 (このIDを非表示/違反報告)
mare 1309 - 続きが気になりすぎます！ (2021年12月29日 16時) (レス) @page6 id: dfb962b940 (このIDを非表示/違反報告)
典楽 - いいえ、質問を答えて下さってありがとうございます (2021年10月28日 17時) (レス) @page6 id: a3c70cbb44 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - 典楽さん» 典楽さん、コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです!(^^)! 花京院の扱いについてですが、小説のオチに関わる部分なので伏せさせていただきます、申し訳ありませんm(__)mこれからも閲覧していただければ、嬉しいです！ (2021年10月27日 21時) (レス) id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
典楽 - とっても好きです。更新頑張ってください、そしてこの小説の花京院は原作通りですか、それとも生存院ですか？ (2021年10月26日 21時) (レス) @page6 id: a3c70cbb44 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りと | 作成日時：2020年3月8日 0時
