memento mori 5【ジョジョの奇妙な冒険】

【謎の溺死体】 ページ21

ぽつりとそう呟いたジョジョの額からツゥと汗が流れ落ちる。

承「…」

　そっとジョジョが死体の顔を持ち上げると、がくんと首が横に倒れ死体の口からマーライオンのように水が溢れだした。

(なんなの…これはッ…！？)

　口からあふれ出した水は見る見るうちに砂漠の砂の上に広がり、水たまりを作りだす。

承「…？こんなに大量の水が…パイロットの口の中から……いや、肺の中からこんなにたくさんの水が……小魚もいるぞ……」

　ジョジョの言う通り、吐き出された水の中には小さな魚がヒクヒクと苦し気にエラを動かしている。ちらりとヘリを見れば、生々しい血の残る爪痕が刻まれていた。そして、この苦しそうな表情や傷のなさそうな体を見る限り、この人の死因は─

『溺死、してる……！？』

承「溺れ死んでいるぜ…！」

　私とジョジョの声がほぼ同時に重なった。ジョジョはどういうことだと言わんばかりに顔を片手で覆ってしまった。

承「この砂漠のど真ん中で……いったい…！？」

　恐ろしくはあったが、おずおずと死体に近づいてみる。顔色はまさしく死人の色だが、まだ死後硬直は進んでいないようだ。砂漠の熱さや男の筋肉量から推測すれば、まだ死んでからそう時間は経っていないだろう。

(…サスペンス小説の知識がこんなところに活きるなんてね…)

　一生使うことはないと思っていた知識だったのに、と男の前で十字を切る。


ポ「お…おい…！」


　離れていたポルナレフ達が不意に声を上げた。何かと振り返ると、ポルナレフ達が砂漠に倒れていた男を囲んでいる。

ポ「もう一人はここにいる！生きてるぞ！！」

　ポルナレフの言葉に私達は慌てて3人のもとに駆け寄った。

『！』

　男の顔は魂が抜けて呆けたようになっていた。

(生きてはいるけど…これじゃ廃人だわ…)

　人が…それも同僚が目の前で原因不明の溺死を遂げたのだから、当たり前といえば当たり前だ。虚ろな目があらぬ方向を見つめ、ポルナレフの腕の中で傷だらけでガタガタと震える姿は、数十分前に私達の所にやってきた人間とはまるで別人のようだった。

ジ「大丈夫かッ！しっかりしろ！」

　ジョースターさんが大声で男に呼びかけると、男の目がジョースターさんを見つめた。

ジ「何があったんだ…！？」

「…み…」

　男は黙って死体と墜落したヘリの方を震える手で指さした。



「みず……」

【水】→←【墜落したヘリ】

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