desire【DIO】 リクエスト・いちご牛乳さん ページ33
ただの欲望だと言い切れる関係だったなら。
「…A｣
隣で眠っている女の名前を呼んでみる。どうやらぐっすり眠っているらしく、少し呻いただけで目を開ける様子はない。髪をそっと指で梳いてみる。柔らかな毛は絡まらずに、スルリと指を通した。その時、ふいに今までの女とは明らかに違う感情が胸にこみ上げてくる。
「ッ！｣
すぐに目の前の女から手を引き、また静かに女を見つめた。愛らしい顔立ちをしていて、どこか懐かしい。娼婦のような毒々しさやいやらしさはない。むしろ、聖女のような清らかさを思わせる女だ。殺すのには惜しい。ただ血液を得るだけの関係では惜しい。その惜しい、が女が今の名前のない関係を築いている。そして、それがなぜか嬉しいと思っている。
「…気でも狂ったのか？このDIOが｣
これはあくまでただの欲望を満たしたからこその歓びなのだ。この女はわたしの欲望を満たす人間に過ぎない。そこに愛情など、生まれない。生まれようがない。そのはずなのだ。そのはずなのに…。
「A…｣
こんな人間ごときに心を掻き乱されるなんて、気に食わない。それなのに、この女を離せない。あまりに矛盾した感情だ。完璧であるはずの存在にはあまりに不釣り合いな感情だ。
「どうしてくれる｣
吐息がかかりそうなほど近くに顔を寄せた。理性を抑えることが難しい程の、甘ったるい血の香りが鼻をくすぐった。ふっと息を吐くと、その白い首筋に牙をたてる。
「ッ！｣
Aの黒真珠のような瞳が見開かれた。
「DIO…ッ…さま…？｣
喘ぐように呼ばれる名前にさらに理性が抑えられなくなっていく。
(ああ)
ゆっくりと首筋に残った血を舐めとった。まだどこか物欲しげな顔をしたAの瞳を覗く。
「どう…したのですか…？｣
のぼせたような顔をして、かすれた声で問いかけるAの熱い頬に触れた。
「…理由などない｣
簡単に殺せてしまうか弱い体を抱き寄せ、目を閉じた。不快でない暖かさに、感じる必要がないはずの安らぎを感じた。
(こんなに安らかな気持ちになったのはいつぶりか…)
おずおずと触れてきた手の温かさが、遠い記憶を思い出させる。この生き方を選んだ瞬間から、感じるつもりなどなかった感情が、胸の中に存在することに気が付いた時、思わずああと呻いていた。
お前に向けたものは、欲望ではなく愛だった。
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りと(プロフ) - 時雨さん» 時雨さん、コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(≧▽≦)あ、ばれてしまいましたか？実は、ジョジョをきっかけに洋楽沼にもどっぷりはまってしまいました（笑） (2022年2月2日 2時) (
レス) id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - 突然のコメント失礼します！どのお話も素敵でついつい一気見しちゃいました…(o^^o)あと…作者様、もしかして洋楽お好きですか！？(*ﾟ▽ﾟ*) (2022年1月30日 16時) (レス) id: 71fef2bd30 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - プンプンするさん» はじめまして、コメントありがとうございます(^^♪ そう言ってもらって嬉しいですm(_ _)m (2017年9月11日 1時) (レス) id: 193ad08974 (このIDを非表示/違反報告)
プンプンする - 最高です！ SPW可愛い…！ (2017年9月10日 20時) (レス) id: 5cff2a66ee (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - りんりん?^?ω?^?さん» りんりんさん、リクエストありがとうございます！承りました(*ﾟ▽ﾟ)ﾉこちらではお話がいっぱいなので、続編の方で書かせていただきます(^^)お手数ですが、続編の方をチェックしていただければ嬉しいです〜 (2016年10月31日 0時) (レス) id: 78fb09e763 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りと | 作成日時：2015年11月13日 0時
