幸せを君に２

メリット ページ20

その提案には驚いた。
北山さんの家に引っ越すなんて、考えもしなかった。
驚きすぎて何も言えない私に北山さんは続ける。


Ki「俺の家なら部屋も今使ってもらってるあの部屋はずっと使ってくれて良いし、セキュリティもしっかりしてるから安全かなと思うんだ。」


「北山さん…あの…ありがたいですけど…そんなに迷惑かけられません。今もうすでに迷惑ばかりかけてしまっていますけど、ずっと一緒に住ませてもらうなんて…」


Ki「ちなみになんだけど…Aちゃんはさ、仕事復帰したい？」


「え…と…したいです。でも…怖くて…」


楓先輩が園長に私が見つかったと連絡をしてくれ、いつでも戻っておいでと言ってくれていると聞いた。
すごく嬉しかった。
またあの動物園で働きたいと思った。
それに働かなければ生きていけない。
でも実際問題、まだ復帰できる状態ではないと自覚している。
普段は特に何もなく過ごせるが、龍のことを思い出してしまうと過呼吸になりそうになる。
男性恐怖症が前よりも悪化していることも自覚しているから不安でしかない。


Ki「俺は無理しなくていいと思うんだ。今はAちゃんの心がちゃんと癒えるのが最優先だと思ってる。だから一度仕事も辞めて、何も気にせずゆっくりしてみたらどうかな？その手伝いを俺にさせてほしい。」


「……」


なかなか頷かない私に北山さんはそれじゃあ…とさらに続ける。


Ki「俺の家にAちゃんが住むメリットを言いまーす！」


戸惑う私をそのままに、北山さんは私が北山さんの家に住むことのメリットを挙げ始めた。


Ki「まずー、俺の家はもう俺の持ち家になってるから、家賃がいらない！
　 それに、さっきも言ったけど、セキュリティは万全！
　 さらに、今のところ元カレに知られていない！」


「でも…」


Ki「あ、あと、俺にもメリットあるんだ！！」


私の言葉を遮ってそう言う北山さん。


Ki「Aちゃんのおいしいごはんが食べられるし、電気のついてる部屋に帰れるっていう幸せを感じられる！！ね？これってWinWinの関係じゃない？」

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