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私が何か言うよりも早く、小鳥遊さんの怒鳴り声が響いた。
「ちょっと、なに考えてんのよ!」
「コイツが先に手ぇ、出してきたんだろ。見てただろ」
「なに小学生みたいなこと言ってんのよ」
怒りに任せてぶちまけたのは良いが、自分の行動の大人げなさと、簓さんのことを馬鹿にされた怒りで頭のなかがぐちゃぐちゃで目の前が真っ黒だ。知らず知らずに頬を涙がつたって、叩かれた頬がヒリヒリする。
小鳥遊さんが慌てて両手を拭いて、私の両肩に手を置いた。男性から守るように、私の背を台所の出口へと押しやる。
「あと数十分でこの会も終わるだろうから、宮ちゃん、もう帰りな」
「で、でも……」
「いま、すっごい酷い顔してるから帰った方がいいって。あのバカの顔も見たくないでしょ」
後ろから一言だけ怒鳴られた。何と言っているか分からなかったけど、不甲斐なさから涙があふれる。
私は小鳥遊さんに頭を下げて、他の人には何も挨拶せずに会場を後にした。
電車に揺れらている間も涙が止まらなかった。見られたくなくって、下を向いて寝たふりをしていた。
電車から降りる時にゴシゴシと顔を拭うと、シャツに化粧が滲んでしまっていた。
「……へへっ」
もしも昨日の夜からやり直せたとしても、私は簓さんにメッセージを送ったんだろうな。
なんてどうでもよいことを考えながら、アパートの鍵穴に鍵を入れた。
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高炉 - 八守葵さん» ここから心苦しいことが続きます。どうかお付き合いください。 (2021年5月29日 19時) (レス) id: 996b1b07b3 (このIDを非表示/違反報告)
八守葵(プロフ) - うわぁ…小鳥遊さんを通して自分の気持ちに気付いて混乱というか不安というか………夢主ちゃんの気持ちは気付いちゃいけなかったのかな…簓さんの懇願するみたいな心の叫びに凄く胸が締め付けられました……泣きそうです… (2021年5月26日 7時) (レス) id: e7d640d42f (このIDを非表示/違反報告)
高炉 - 八守葵さん» 大切にしてるからこそ、ガンガン攻められない簓さん……。自分の癖を詰め込んでいく方向で執筆しております。同志がいてくれて嬉しいです。 (2021年5月22日 17時) (レス) id: 02eddfa9d5 (このIDを非表示/違反報告)
八守葵(プロフ) - ハァァァ〜〜、待って下さいシチュエーション最高すぎません?彼氏って言われて浮かれるのとか芸人としてじゃなくて一人の男の人として夢主ちゃんに想いを寄せているんだなぁ……って思いました! (2021年5月21日 22時) (レス) id: e7d640d42f (このIDを非表示/違反報告)
高炉 - 八守葵さん» いえいえ!こちらこそ、企画期間中たくさんのリクエストをよせていただきありがとうございました。猫化の話など、個人的に気に入っております! (2021年5月9日 19時) (レス) id: 348a12973c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:高炉 | 作成日時:2021年5月1日 17時