ひとっつ ページ1
しとしと雨が降る六月。
街には明かりが灯り、酔った
マセガキたちが徘徊する時間。
つまり深夜。
俺は深夜に一人、雨に打たれながら、
ポートマフィアにはブラックも糞もねぇんだよ。
この
当然の報いだな。
そんなことを思っているうちに、ぐしゃり、と音がして、俺の任務の終わりを告げた。
「終わり、ッと。」
生死の確認は、するまでもない。
そして、どこからか出てきた黒服の部下たちに、
「コレ片しとけ。」
と、先程まで生きていた物体を指さし、命じて、俺は路地裏を背に歩き出した。
・
しばらく歩くと、開けた場所に出た。
人っ子一人いない場所。
左には、幾つかの大きな貿易船が止まっている港があり、
正面から右にかけては、雨が叩きつけられて水面が荒れている海だけだった。
ざあああ、という雨の音しか聞こえない。
「こんな場所があったんだな。」
ぽつり、と一人でつぶやくと、隣からパシャリ、という水の音。
誰か来たのか、と思い右を見ると、そこには不思議な光景が広がっていた。
雨が、宙で弾かれて、あたかもそこに人がいるような輪郭を
浮かび上がらせていた。
……いや。いるような、ではなく実際そこに人間がいるのだ。
だが、一つ違うのは、そいつが透明なこと。
それが一番の違いだ。
異能者か。
そう思い声をかけた。
「おい、手前、」
「!」
すると、こちらに気づいていなかったようで、バッと俺のほうを見ると、
一目散に逃げだした。
やましいことでもあんのか?
「待て!!」
呼び止め、異能を使って速度を上乗せし、走って追いかける。
が、そいつは、屋根の下に避難して、雨から逃れて、見えなくなっちまった。
「なんなんだよ………」
その場に残ったのは、雨の音と、びしょ濡れの俺だけだッた。
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作者名:アケ | 作成日時:2019年2月9日 0時