弐拾陸《織田side》 ページ28
此れは、蓮が女と暴露る前夜____
織田は珍しく彼女の方から誘われ何時もの酒場《Lupin》を訪れていた。
着くと、其処には既に蓮がいた。
いつも来ているジャケットを脱ぐと、女性らしさが表れる。
「その格好だと女らしいな」
『………あんま嬉しくない』
そんなやり取りを交わしながら織田は彼女の横に座る。
すっかり彼女のお気に入りとなった《キール》と呼ばれるカクテルの横に、
織田の何時も飲んでいる琥珀色の酒が並べられた。
彼此、彼女と飲むようになってから二ヶ月が経った。
その間にずっと疑問に思っていた、何故女なのにそんな格好をしてるのか、尋ねたりもした。
聞いた時、彼女は驚いた様に目を見開いたが、直ぐに女だと認めた。
何故男装しているのかは話さなかったが、其処迄干渉する気にはならなかった。
何れ、話してくれる時が来るだろうと思い乍その日は酒を一杯だけ飲み帰ったのを覚えている。
『急によんで悪いね』
グラスの氷を見詰めながら彼女は言った。
織田は「大丈夫だ」と答えてから何時も飲まないはずの度数の高い酒を頼んだ。
何故頼んだのかを彼女に尋ねられると、気分だ、とだけ言った。
『俺も同じの飲んで見たい。
マスター、俺も作之助さんとおんなじのを』
「おい、此れは度数がかなり強いぞ。
俺も飲むのは一杯だけだ」
『俺も一杯だけにするから大丈夫だよ』
織田の持っていたマッチ箱を手で弄びながら彼女は笑う。
あまり蓮の年齢で飲んで欲しいものではない。
まあ、恐らく一口でつぶれてしまうだろうが。
「其れで、話とは何だ」
既に少し酔いが回ったのか、ほんのりと頰を蒸気させた彼女に聞いた。
彼女は「いやね」と自嘲的な笑みを浮かべてから紅蓮の瞳を真っ直ぐこちらに射抜く様に向けた。
その瞳に思わず息を呑む。
彼女の年齢で出せるものとは思えない色気が其処にはあった。
『____俺が、男装してる理由。
作之助さんには話しときたいな、と思ってね』
向けられた男の情欲を沸き立てる様な微笑みで此方を見る彼女。
同時に其れは直ぐにも壊れてしまいそうで、織田は唯、黙るしか無かった。
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作者名:鸞宮子 瑩 | 作成日時:2019年9月19日 21時