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部屋に戻ってもきっと話題の中心になるのは、マルフォイとポッターの箒勝負と、ポッターの処遇についてだろうとわかり切っていた。英雄の悪口で盛り上がるのはAにとって全く魅力のないことだった。
寮に向かうのは辞め、Aは医務室へ向かうことにした。ぼきり。あの音が残響する。
「あ、ありがとう、A。お見舞いに来てくれたのは君が初めてだよ」
ネビルは眉を下げて嬉しそうにAを歓迎してくれた。腕には白の包帯が巻かれ、首から吊り下げられている。
「怪我の具合はどうなの?」
眉をきゅっとして、心配そうに囁くAにネビルはおどおどして言う。
「ぜ、全然痛くないよ。夜には腕はくっつくって先生が」
「そう…マダム・ポンフリーは本当に優秀な癒者でいらっしゃるのね」
ほっと胸をなでおろし、感心の声を漏らす。
「でもネビル、気を付けないと。あなたは怪我が多すぎるとおもうわ」
「う、うん、そうなんだ。僕ってドジだから……でももう慣れっこだよ」
「痛みには慣れないでしょう。それに、痛い思いはなるたけしないほうが良いはずだもの」
咎めるような口調だったが、彼女の声はとても優しかったのでネビルはどぎまぎしながら俯いた。
「もうすぐディナーだけど、あなたはどうするの?」
「ここに運んでもらう予定なんだ」
「まあ、先生が?」
「ううん、ハウスエルフだよ」
「ハウスエルフがいるの?」
「うん、ホグワーツに就いてるみたいなんだ。地下にたくさんいるって…」
「そうなの…」
確かにこんな立派な城にはいない方がおかしい。Aは良いことを聞いたと嬉しくなった。彼らはとても優秀で忠実なしもべだ。Aは彼らが好きだった。
「もう行くわ。お大事にね、ネビル」
「来てくれてありがとう。僕、僕、とっても嬉しかった」
微笑みを交わしてAは去った。ネビルは鈍臭くて、ドジで、いろんなことが苦手だけれど、とても話しやすい雰囲気を持っているし、高慢でない。彼の良いところはいくつもあると思う。
大広間に入ると、ちょうどマルフォイがクラッブとゴイルを引き連れて、ポッターに何事かを楽しそうに囁いている最中だった。
Aは肩を竦めてダフネの元に向かった。彼女はパンジーと違って、マルフォイたちのパフォーマンスに興味はないようで、黙々と食事を口に運んでいた。
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作者名:うたかた | 作成日時:2019年5月28日 18時