職員室 ページ2
自宅の最寄り駅に着いた私は
タクシーを捕まえ風舞高校へと向かう
まだ帰宅ラッシュには早い時間帯なので人もまばらだ
タクシーの中でおじいちゃんかかり付けの接骨院へ、予約の連絡を入れる
とても優しい先生で、急な予約だったが快く対応して下さった
一息ついた私は
窓を開け春の暖かな空気を思いっきり吸込む
少し前までは沈丁花のいい香りが街を包んでいたが、今はだんだんとライラックの香りが鼻をくすぐる季節になっていた
心地よい春の風と車のゆれを楽しんでいると
窓の外に学ランを着た男の子と、グリーンを基調とした落ち着いた色合いのセーラー服を着た女の子が増えてきたことに気づく
風舞高校の制服だ
校内の駐車場にタクシーを止め
直ぐ戻るので、と運転手さんに待っていてもらうようお願いをし
私は職員室へと向かう
風舞高校の弓道部はずっと休部――廃部同然――状態だったが
おじいちゃんが赴任したのをきっかけに、今の校長先生が弓道部を再生しようと積極的に動いて下さっている
何と言っても私のおじいちゃんは弓道六段なのだ
若人の意見も取り入れたい、と校長先生の希望もあり
内装や備品の選定など、私も春休みに何度か風舞高校の弓道場に招かれた事がある
その時に校内を案内してもらったり、職員室へお邪魔したこともあったので
何人かの先生とは顔見知りになっていた
「こんにちは〜」
来客用の出入り口からまっすぐ職員室へと向かい、軽くノックをした後ひょこっと顔を出す
「あれ、Aちゃん。」
角刈り頭の男性がこちらに気付き声を掛けてくれた
たしか体育を担当している先生だったと思うが名前は憶えていない
「あぁ、森岡先生のお迎えってAちゃんだったのか。
さっき迎えが来るまで部活行きたいって言われたから、俺が弓道場まで送ったよ」
そう言って角切り頭の男性教諭は旧校舎の方――弓道場の方角――を指さす
「もぅ、腰痛めてる時くらい大人しくして欲しいのに…
ありがとうございます。弓道場行ってみますね。」
私は頭を下げにっこりとお礼を言い職員室を後にする
歩き出した私の背中に声が届く
「Aちゃん!…送っていこうか?」
先程の男性教諭が、職員室から身体を半分ほど出してこちらを見ていた
「ありがとうございます。でも、場所も分かりますし大丈夫です。」
丁重にお断りし
再度頭を下げ、私は弓道場へと小走りで向かう
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まんじゅう - 凄く面白いです!更新待ってます( *´꒳`* ) (12月30日 6時) (レス) @page12 id: 2ede693103 (このIDを非表示/違反報告)
まま - マサさんの心情の表現もよかったし、続きめちゃくちゃ気になります!! (2023年3月19日 0時) (レス) @page12 id: 21c8ee624a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さのすけ | 作者ホームページ:https://twitter.com/sanomasa0810
作成日時:2019年7月1日 1時