35、…わるかった、つまみ食いはしない ページ9
「でき…たぁっ」
「Aちゃん、お疲れ様」
重箱に作り終わった物を綺麗に詰め終わり、筋を伸ばしているAに燭台切が温かい緑茶を持ってくる。
「お疲れ様。それにしても、初めてとは思えないくらい上手じゃないか。これからもたまに手伝ってくれるかい?」
「…!うん!」
お茶をすすっていると、歌仙がにこやかに微笑みながらそう話しかけ、Aは嬉しそうに頷く。
「おお!ずいぶんとうまそうだな!」
「あ!こら、鶴さん!つまみ食いはダメって言ったのに!」
「ちょっとぐらい、いいじゃないか」
ひょっこりと顔を覗かせたのは鶴丸だった。そして、作ったばかりのおせちに手を伸ばそうとする。
「…だめ」
「A…?」
「いっしょうけんめいつくったから、みんなに見てもらいたいの」
ぷくっと頬を膨らませてこちらを見上げる少女に、鶴丸は気まり悪げに目を逸らす。
「…わるかった、つまみ食いはしない」
そのまま、鶴丸は台所を出て行く。
「そうだ、Aちゃん。年越し蕎麦の手伝いも頼めるかな?」
「わかった」
どこかほっとした様子でその後ろ姿を見送った燭台切が、Aにそう声を掛ければ、Aはしっかりと頷いた。
―その夜。
「宴会だー!」
「次郎、はしゃぐのはわかりますが、もう少々静かに」
「そっちにお酒足りてるー?」
「こっちは大丈夫だ!向こうが足りない」
「この前の夜戦で、誉をたくさん頂きました」
「すごいですね!」
阿鼻叫喚の騒ぎになっていた。
「A、しっかり食べているか?」
「うん。みかづき、これ、わたしがつくったの」
小さな指で指差した料理を見て、三日月は嬉しそうに破顔する。
「ふむ、ではいただくか」
優雅に箸を操り、Aの指差した料理を食べる。
「…どう?」
「うむ、うまいな」
「…よかった」
心配そうにそっと尋ねるAに大きく頷いてあげれば、Aはほっとしたように声を漏らす。
「食べさせてやろう」
「じ、じぶんでたべれます!」
「よいではないか」
後ろからAを抱きしめたところで、乱がやってくる。
「あー!三日月、Aになにしてるの!」
「いや、Aに食べさせてやろうと思ってな」
「嫌がってるでしょ!」
乱は、三日月の腕の中からAを奪い取る。
「A、あっちで食べよう。いち兄とか、他の短刀とかもいるから」
Aはどこかほっとしたように頷き、乱と一緒に、寂しげな三日月に気が付かないふりをして短刀の元へ行った
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