検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:56,934 hit

38、…ああ、どういたしまして ページ12

どこへ行くと長谷部が声を掛ければ、

「ちょっくらAを寝かせに行ってくる。…前、三日月の旦那が勝手に部屋に連れ帰ったりしたからな」

と、苦笑しながらAを抱きかかえる。

「…や、げん…」

「どうした?」

夢現の中で、呟かれた己の名に、おそらくわかっていないであろうことは承知しつつも、返事をしてやれば、仄かな笑みを浮かべて、頬を摺り寄せてくる。

「…あり、がと」

「…ああ、どういたしまして」

そのまま、すやすやと本格的に寝入ってしまった少女の寝顔を見つめ、まだまだ軽いが、ここに来た当時よりも確実に重さを増した体を感じ、あとどれだけ抱き上げてやることができるだろうかと考える。
姿が変わらない自分たちを置いて、成長し、年を取っていくのだろう。
自分が抱え上げることができなくなっても、まだまだこの少女の命は続く。
だが、その分だけ、人の命のもろさに触れることになるのかもしれない。
人の身の体を取った己が、どれだけ生きるのかはわからない。しかし、この少女がこの世から消えるよりも早くということはないだろう。

それでも、自分を含めた、この本丸の全ての刀剣達は、この儚い少女を最期まで慈しみ、愛おしむのだろう。



ちょっとした感傷に浸りながら、いつもAが寝ている粟田口の短刀たちの部屋に着けば、すでに弟たちが数振り、健やかに寝ていた。ただ、疲れていたのか、布団すら敷いていない。

「まったく…」

苦笑いを浮かべると、そっとAを下ろし、エアコンのスイッチをオンにし(前審神者がすべての部屋にエアコンをつけていた)、皆の分の布団を敷いてやる。

「…………」

Aを布団に寝かせた後、弟たちをどうするか考え込み、最終的に全員を布団に運んでやった。

「じゃあ、もちっと飲むかな」

一仕事終えた薬研は、そのまま縁側に戻り、長谷部と1杯酌み交わした。

39、おきないとだめだよ?→←37、今年もよろしくな



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (91 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
481人がお気に入り
設定タグ:刀剣乱舞 , 女主 , ほのぼの
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:不知火朔 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2016年12月15日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。