#3 ページ38
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「さやちゃん、今日ひとり？」
「ううん、そこにママがいる」
さやちゃんが指さした先にお母さんらしき人がいた。お母さんがさやちゃんのことを手招きして呼ぶから、さやちゃんは「また今度これ読んでね！」とお兄さんにある本をポンと渡して、お母さんの元に走っていった。
「バイバイさやちゃん」
「おねーちゃんも今度読んでね！」
アハハって笑って誤魔化しちゃったけど、お兄さんは「いいじゃん！読み聞かせ、一緒にやる？」と言ってきた。
「え？」
「この時間によく居るよね？ちょうどこの時間帯の金曜に読み聞かせやってるんだ」
ニコって、またこっち見て笑った。その優しそうな表情に思わずひとりごとのように、その言葉が出た。
「…やる」
「やる！？やった！俺ひとりで心細かったんだよねぇ」
彼は本当に嬉しそうな顔で笑った。
「あ、そうだ、俺自己紹介してなかったよね？相葉雅紀っていいます。よろしくね」
「あ、AAです、よろしくです」
キラキラ笑顔な相葉さん、この人は他にどんな顔を持ってるんだろう…。その笑顔がしんどい。好きに好きが重なっていく。
それからは、毎週金曜日に読み聞かせをしに図書館に通った。ボランティアスタッフみたいな感じで。相葉さんは大学4年生で、私の3つ上だった。
子どもたちが多い時は2人で分かれて。少ない時は、しかけ絵本とかを2人がかりで読んだりした。
今日は人が少なくて、大きめのしかけ絵本を読んでたら、恋物語だったからか、1人の男の子が「相葉はコレいないの？」と小指を立てた。誰だそんなこと教えたのは。パパ？親戚のおばさん？
「また呼び捨てで呼ぶじゃん(笑) いないよーコレ」
「Aちゃんは？」
女の子が私に訊いてきた。
「えー？いると思う？」
「絶対いない奴じゃんそれー！」
バレたか。
「いないもの同士、付き合っちゃえば？」
「お似合いだよ！」
えーなにそれーって誤魔化すように笑ったら、隣で「俺とAちゃん、お似合いなの？」って子どもたちに訊いてる。
「うん、似合ってる！」
「ふたりとも雰囲気似てるもん」
私と同じように、アハハって笑ってる。
困っちゃうなーなんて誤魔化すのかな。そう思っていたら
「嬉しいな」
ぽそっと聞こえた言葉に耳を疑った。
そして彼はこちらを見て、優しく微笑んだ。
それは見たことの無い、優しすぎる表情だった。
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さんご(プロフ) - しおりさん» はじめまして、しおりさん。コメントありがとうございます。そんなこと言って頂けるなんて、もう嬉しい限りです(笑)こちらこそありがとうございます(´ω｀) (2019年9月21日 12時) (
レス) id: e1b1cf4c3f (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - はじめまして。どのお話も優しくて、心が温かくなりました。さんごさんの丁寧な言葉の紡ぎかた大好きです。多分何度も読みに来ちゃうやつだ(^^)ありがとうございます。 (2019年9月21日 7時) (レス) id: 072c120661 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さんご | 作成日時：2019年8月15日 16時
