第60話 ページ20
【左馬刻side】
懐かしい夢から目を覚ますように、息を吐いた。
それは着物の締め付けから開放されるための息なのか、昔に蓋をするための息なのか。
まったくもって自分には分からないけれど、勝手に前者だと決めつけて瞼を持ち上げる。
「…空、高ぇな」
窓から覗いた空は、果てなど知りもしないでどこまでも広がっていた。
眩しい。
広がる青空と輝く太陽は、まるで泪の笑顔みたいで思わず頬が緩む。
「…っと、マ ジかよ」
思わず緩んだ頬に、慌てて手を添える。
緩みきった口元は甘い弧を描いていて、『こんな顔、泪以外には見せらんねえな』なんて思ってしまう。
自分でも、どうしてこんなに泪に執着しているのか分からない時がある。
『幼馴染』
その一言だけで泪を優遇しているようになってしまうのに、『それだけじゃない』と心の奥底から声がする。
だってアイツは、俺の光だからだ。
恋愛感情なんて生ぬるいものでは表しきれなくて、そこら辺の女と同じにしてしまうなんて安すぎて。
泪の声を、笑顔を思い出すだけで、あの肌に、唇に触れるだけで、どうしようもなく『眩しい』と思ってしまう。
あの光の隣に俺がいて居ていいのか。
あの光を手に入れていいのか。
あの光を、俺の中に閉じ込めていいのか。
毎日のように自問自答して、その度に泪は俺の中に飛び込んできた。
丸い瞳に俺を映して、頬を緩める。
『左馬刻！』
そう呼ばれる声ですら愛おしくて、『もっと』と欲張ってしまう自分が居る。
「戻れねえな…」
一つ息を吐いてそう呟く。
泪が居ない人生なんて想像が出来ない。
あの体温が俺以外に触れられて、あの声が俺の名前以外を呼んで、あの瞳に俺以外が映るなんて想像ができない。
まあそんなこと、俺の目が黒いうちは絶対させねえけど。
乾いた笑いが部屋に響いた。
「行くか」
すっと瞳を細めて立ち上がる。
さあ、前を見て、
胸を張って、
拳を握って。
守り抜け。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1485人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
トーマ - ついに完結してしまった…これからも幸せでいてほしいですね〜もう一回全部読んできます、神作品をありがとうございました！！煉くんかわ…かっこいい、女の子の扱い方うまそう… 次の作品もたのしみにしてます！ (2019年1月26日 9時) (
レス) id: 886f42f433 (このIDを非表示/違反報告)
カコ - 完結と同時にコメントしたかった・・・こんな幸せな作品をありがとうございました。他にもいろいろ言いたいことはあるけど、とても言い尽せそうにありません。なので、もう一度言わせてください。ありがとうございました。 (2019年1月25日 0時) (レス) id: 7a3bf8ffac (このIDを非表示/違反報告)
うすしおタルト(プロフ) - 花蓮さん» ありがとうございます！！よかったです〜！たくさん読み返して頂けて幸せです！！ (2019年1月22日 20時) (レス) id: 9f30b37ea7 (このIDを非表示/違反報告)
うすしおタルト(プロフ) - 麗華さん» ありがとうございます！！想像の斜め上行けましたかっ！？楽しんで頂けたのなら幸いです！！ (2019年1月22日 20時) (レス) id: 9f30b37ea7 (このIDを非表示/違反報告)
うすしおタルト(プロフ) - 魔王さん» ありがとうございます！！素敵だなんてそんな…っ！たくさん読み返して頂けたら幸いです！！ (2019年1月22日 20時) (レス) id: 9f30b37ea7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：うすしおタルト | 作成日時：2018年11月28日 19時
