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40話 ページ42

暗い部屋の中で見ているせいで、いつもより瞳孔が大きくて少しだけ驚いた。

Aはなぜか、少しだけ笑って、寂しそうに、申し訳なさそうに。


「心残り、私しかないんですね」

「……」

「なんか、うれしくなっちゃった」

「……うるさいわね、もう」


くすくす、くすくす、と上機嫌に笑い合う。Aは肩を竦めて。


「いいですよ。ヴィルさんを見届けた後、すぐに逝きます」

「……よかった」


本心からそう思った。アンタも十分頑張ったんだから、もう楽になって、って。

十分。十分よ。アタシ達。もう十分だから。


「……そして、喧嘩の理由が思い付かない」

「ふふふ」

「うーん、困りました」


幸せで涙が出てきてしまった。

幸せで、幸せで。


「……ねえ、キスして頂戴よ」


アタシが俯いたままそう言うと、数瞬置いて、顔のいちばん爛れた部分──頬──へ、涙を追うようにして唇を落としてもらえて、自然に微笑みが出た。Aも、少し照れながら諦めたように、笑っていた。


「綺麗ですよ、あなたは」

「……」

「ずっと1番綺麗です」


今までの全部が救われたような気がした。


「……ごめんなさい」

「いいですよ」


何故か唐突に口からまろびでた、何に対してかもわからない謝罪にすら、Aは諾々と。

よかったわ。終わってくれて。


綺麗な幕引きにしてくれてありがとう、A。


アンタ脚本家としての素質もあったのかもね。


もう全部、終わりだけど。


終わりだから。


よかった。







ソファーで隣に座るAが肩を竦めて、パッドを下敷きにし、ペンで書いていた文章を見せてくる。受け取って読んでみると。


「……これでよさそうですかね」

「……うーん」


ヴィル・シェーンハイトは毒を盛って自分が殺しました。ずっと嫌っていたけど隠していました。顔が綺麗か綺麗じゃないかなんて本当はわかっていたけど、ヴィルさんの顔を綺麗だと言うのが癪でそういうことにしていただけで、本当はわかっていて、醜くなった癖にまだ自分の外見に対して注意をしてくるうざったらしいヴィル・シェーンハイトに腹が立って殺してしまいました。殺した後に世間からのバッシングが怖くなったので自分も死にます──なんて、そんな。無理があるわよ。

けど。無理があると、違和感を持ってくれる人が居るなら、悪いとこ全部持って行ったこの後輩にも、ほんの少し、救いがある気がして。


「……いいと思うわ」

「わかりました。じゃあこれで」













おやすみなさい。









ごくり。

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自分(プロフ) - チョコドーナツさん» こちらの作品も読んでいただけてうれしすぎちゃったな……🥰🥰🥰ウレチイウレチイ 泣いてくださってありがとうございましたすぎる……本当にありがたい……😭😭😭🙏 (2022年8月1日 12時) (レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
チョコドーナツ(プロフ) - 共依存……好きすぎます……!!どうしてそんなに言葉選びが上手なんですか……順番変ですけど、感動して泣いちゃいました(´;ω;`) (2022年8月1日 12時) (レス) id: 915577a7d1 (このIDを非表示/違反報告)
特になし(プロフ) - いいさん» お読みいただきコメントもいただきありがとうございます🥰🥰🥰ウレチイ……!!精一杯お互いを幸福にしようと頑張った…… (2022年4月13日 21時) (レス) id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)
いい - 2人だけの世界で終わらせれたのが泣けました…最初から最後まで二人だけの世界だったんだね… (2022年4月13日 21時) (レス) @page40 id: 03be76b48c (このIDを非表示/違反報告)
特になし(プロフ) - 充さん» こちらこそ読んでくださって、人のために涙を流してくださって、その上それを私に伝えてくださって本当にありがとうございます🥰🥰🥰すごく嬉しい (2022年3月29日 5時) (レス) @page48 id: a1f82c8f4e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わたし | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年2月23日 13時

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