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反撃 ページ50

「おい聞いたか?二剣様が謹慎処分を受けたって」

「ああ、なんでも間者の疑いをかけられたらしい」


偶然通りかかった場所で聞いてしまった徳川兵士の会話。
話の内容に思わず心臓が凍りつきそうになったが、自業自得だと勝家は思った。


「(いくら姉弟とはいえ、徳川氏も主君としての立場がある。寧ろ正しい判断だ)」


冷静に受け入れようとするが、どこかで家康を非情だと思う部分もあった。

確かにAの行動は間者と疑われても仕方ない。
竹中半兵衛や石田三成とその配下を匿って手当てを施した。
だがそれは彼女が手探り状態だったから。
何を信じていいのか分からなかったから、自分に出来ることを精一杯やっていたに違いない。


『お前がそうやって燻っている間も時は動く。見いだせないのならばとにかく何も考えずに進め。そうすればいつか自ずと答えは出る』


……もしかして、私がその背を押してしまったのか?
いや違う。あの言葉はそんなつもりで言ったわけじゃない。
あれは、私なりにAを励まそうと……。


「柴田勝家、君に聞きたいことがある」


思い悩むことに集中し過ぎて人の気配に気が付かず、背後を取られてしまう。


「……誰だ」

「君は天海という男が何を企んでいるか知っているのか」

「突然話しかけておいて名乗りもしない輩に答える義理は無い」

「……春霖(しゅんりん)。A様からはそう名付けられた」


顔を傾けると、覆面姿の人物がいた。
目元だけでは男か女かも判断出来ない中性的な顔立ちの春霖に対して勝家はそっぽを向いて呟いた。


「……新参者か。配下であるのならその名を軽々しく呼んではいけない。次からは『二剣』と呼ぶべきだ」

「……何故?」

「『A』という名は、戸田の人間から授かった名だからと聞いている」


ああ、なるほど。と春霖は覆面の下で理解した。
戸田家は松平家を裏切っている。
その戸田家の人間が付けたから家臣の間では『A』を忌み名とされているのだろう。


「それだけA……いや、二剣様のことを知りながら今回の件は何とも思っていないのかい?」

「自業自得だ。頭を冷やすいい機会だろう」


そう言いつつも伏し目がちの瞳には懸念の色が表れている。


「そうか、残念だ。君が協力してくれるのなら魔王の妹の捜索を手伝おうとも思っていたんだが」


勝家の瞳が懸念から動揺に変わる。
春霖は覆面越しに不敵な笑みを浮かべて、釣り糸が引いた感覚を確かに感じた。

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作者名:三楓 | 作成日時:2019年10月28日 22時

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