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リスタート ページ40

最後の織田の旗が倒れ、徳川の御旗が秀吉の行く手を阻んだ。


「おのれ徳川!我らを謀ったか!」


刃を振りかざして迫る豊臣兵の攻撃を避け、その鳩尾に拳を入れる。
次々と豊臣の旗も倒れ、残り僅かとなったところでようやく秀吉が口を開いた。


「血迷ったか家康」

「迷ってなどいない。貴方を倒してこそ始まりとなるのだから」


顔を隠していた頭巾を剥ぐ。
拳を固く握り、その決意を秀吉へ向けた。


「それがお前の決意か。ならばその決意ごと我が拳で粉砕してくれようぞ!」

*******

雨が降り出した。
水を含んだ泥濘(ぬかるみ)に足元をすくわれつつ、Aは半兵衛と戦う。
凍てつくような雨が彼らの体力を奪い、病の悪化も相まってか先に半兵衛が膝をついてしまった。

雨雫が垂れる前髪をかきあげ、Aは一度息を整える。


「僕は……豊臣(僕たち)は、こんなところで足止めを喰らっている暇なんてないんだッ!」

「……もう止めてください。勝負はつきました」


ただでさえ病というハンデを背負う中での戦い。息をするだけでも苦しそうな彼の姿を見て、これ以上戦えという方が酷な話だ。

それでも半兵衛は立ち上がる。
鉛味の唾液を呑み込んで、目の前に立つAに刃を向けた。


「もし僕を哀れんでその言葉を発しているのなら不快だよ。知らないのなら今覚えておくといい。半端な優しさは相手への侮辱だ」

「……」

「家康君の意に従うと決めたのなら、僕を殺す勢いで来い。君のその刃は何のためにある……!」

豊臣で過ごした日々が、温かさが、余計な感情と共に入り混じる。

今の私はなんだ?豊臣の女中か?
……違う。徳川の、家康の刃だ。
迷うな。情を捨て、目の前の男をただ“敵”と見なせ。

そして黒百合の花が咲く。
鉛の香りを放つその花は、徳川軍の喝采を浴びながら春時雨に打たれた。

虚ろな瞳のAを小さなAが悲しそうに見ている。


『だから言ったのに。これ以上踏み込んじゃダメって。誰かに恋をしたところで苦しいだけ。自分が傷つくだけ。母上や勝家を見ていた貴方なら一番よく分かっていたはず』

「……そうだな。もう戻れないんだ。大人しくこの恋は過去のものにしよう」


家康と共に先へ進むため。
Aもまた豊臣と……三成たちとの離別を決めた。

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作者名:三楓 | 作成日時:2019年10月28日 22時

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