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佐和山城防衛戦4 ページ33

一時の静寂がその場を過ぎ去ってから、Aは一歩、二歩と三成の元へ歩み寄った。


「なんでこんなところにいるんですか。織田の足止めは私がやると……!」


Aが興奮気味に声を上げると、「口答えするな」と言わんばかりに睨まれる。
ただでさえつり目だというのに目尻はいつも以上につり上がっていた。
彼が本気で怒っているのを察して、言葉が詰まる。

すると勝家の方からか細い声が聞こえた。


「……すまないA。私のせいで」


膝をついたままの彼はただ俯いて拳を握りしめていた。


「何を言っているんだ。勝家のせいじゃない。それより背中の銃弾は……」


勝家の容態を診ようと彼の元へ戻って行く。
三成は頬に付いた返り血を拭ってAの背中越しにいる勝家をじっと見ていた。


「(“勝家”?ではあの男が……)」


魔王と恐れられる織田信長に逆らったくらいの男だ。
全身から闘志を燃やす屈強な猛者を想像していたが、随分想像とはかけ離れていた。
かの者には闘志どころか覇気すらもない。
おまけに味方兵から狙われるなど、無様もいいところだ。


「三成さん、勝家を医務室へ運んでも構いませんか?」


考え事をしていた三成はAの声で我に返る。


「この男は敵だろう」

「それは、そうですけど……。だからってこのまま放っておくわけには」


勝家を特別視するAが気に入らない。
それほどこの男に未練があるのかと思うとモヤモヤした。
思わず舌打ちが出る。


「何が戦力に関してはご心配なくだ。情に惑わされるようではただの足手まといだ」


三成の言葉がAの胸中に深く突き刺さる。


「来い。その男の手当ては別の者に任せる。まずは貴様からだ」


強く腕を引かれ、Aは戦線離脱を余儀なくされた。
三成と共に吉継や左近も来ていたらしく、指揮や勝家のことは彼らに任せることに。

前を歩く三成の背を見ながら、Aは息苦しくなる。
勝家ほど重症は負っていない。
本当はまだ戦える。
徳川の旗を背負っている分、ここで終わるわけにはいかない。
その意思はあれど、三成の手を振り払うことは出来なかった。


「(足手まとい、か)」


久しぶりにかけられたその言葉が重く圧しかかる。
今まではただの妬みだと割り切ってその悔しさを糧に戦ってきたが、三成から言われるとまたその意味合いが変わった。

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作者名:三楓 | 作成日時:2019年10月28日 22時

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