陰り ページ24
その頃家康は半兵衛の元を訪れていた。
「……遺体の処理を任せてしまってすまない」
「構わないさ。君たちが独断で動いてくれたお陰で織田との全面的な衝突は免れた。寧ろ感謝しなければならない」
「感謝されても困るな。元を辿ればわしの甘さが招いた結末だ。早いうちから叔父上を止めていればここまで大事にならなかったかもしれない」
「そう悲観的にならなくてもいい。君はよく頑張っているとも。あとは僕たちに任せて今日は休むといい。忠勝君も君たちを心配していたようだからね」
家康は横切る半兵衛に頭を下げる。
半兵衛が視界から外れると頭を上げて後ろを振り向いた。
そこには横切ったはずの半兵衛が後ろで手を組みながら立ち止まっている。
「そうそう、君に伝えなければならないことがあった」
僅かに首を捻って、静かな声で呟く。
「真喜姫が死んだそうだ」
突然の訃報に家康は驚きの声さえも出なくなる。
「何者かに首を斬られて即死。手馴れた者の犯行と見て間違いないだろう」
「……そうか」
「Aちゃんに伝えるかどうかは君に任せるよ。最も、今の彼女には受け入れ難いことだろうけど」
足音が遠ざかっていく。
残された家康はしんっと静まり返った部屋の柱に手をついた。
深く、溜息を吐く。
「叔父上と母上が亡くなったというのに、罪悪感の合間に安堵している自分がいる。なんでだろうな。悲しいはずなのに、ねじ切れそうなほど心が痛いのに……わしは、これでよかったと思っている」
奥歯を噛み締め、柱に八つ当たりをした。
「大丈夫、わしは間違っていない。何も、間違っていない……」
迷う自分にひたすら言い聞かせる。
今までもそうしてきた。
今回もきっと大丈夫。
これで、泰平の世が築けるのなら……。
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作者名:三楓 | 作成日時:2019年10月28日 22時