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楔を以て楔を抜く ページ22

『黒百合』状態になったAが出て行ったあと、真喜姫の部屋に入れ替わりで入って来たのは周辺を警備していた勝家だった。

相変わらず無表情で真喜姫の様子を見つつ、廊下の先から聞こえる激しい物音に耳を傾ける。
どうやら侵入者が現れたようだ。
応戦した方がいいのだろうか、と迷いながら部屋の敷居をまたぐ。


「織田の方……織田の方……」


真喜姫に呼ばれて振り向く。
頭を抑えながらうずくまっているため表情は伺えない。


「分かっているのです……私が、兄上や子どもたちの枷になってしまっていること……。だから織田の方、どうか私に引導を。助けると思って、私を……」


薄れゆく理性の中、真喜姫は苦しみ、足掻く。
自分に憐憫を向けない勝家に対して深く頭を下げたかと思えば、次の瞬間カッと目を開いて別人のように叫び出す。


「いや……っ!殺さないで!私にはまだやるべきことがあるの!復讐しなければならないの!」


彼女がこうして豹変するのは戸田の屋敷(ここ)に来て何度も目の当たりにしていた。
今更驚くようなこともなく、勝家はただ黙って見ている。


「お願い……手遅れになる前に私を……。いやっ!私を殺さないで!」


一瞬にして顔つきが変わる様はまるで妖に取り憑かれているようだった。
……本当に妖が憑いてるのならそれはそれで興味深いが。


「生憎、貴方を殺せとは命じられていない」

「殺してあげなさい勝家。それがその方にとっての幸なのですから」


言いのけた勝家の背後からのそりと天海が現れる。


「どのみち彼女は貴方が殺さないにしても自決を選ぶでしょう。ならば最期に“人助け”をしてみてはどうですか?」

「人助け……?」

「ええ。他者を苦しみから解放する、それは立派な“人助け”です。貴方の罪も少しは軽くなるかもしれませんよ」


マスク越しに薄笑いする天海。
決して強要しているわけではなく、あくまでも勝家に判断を委ねた。

勝家は勝家でその発言を“命令”と捉えたのか、「仰せのままに」と呟いて逆刃薙を真喜姫の首に向けた。

死に際、真喜姫は大きく深呼吸して覚悟を決める。

愛する人の子を憎悪する自分に飲み込まれる前に。
最愛の娘の決意を揺るがす母となってしまった自分を抑え込むために。


「竹千代、貴方は自分の信じる道を進みなさい。A、ずっと辛い思いをさせてごめんね」


最後は勝家の手によって、徳川と戸田の関係は終わりを告げた。

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作者名:三楓 | 作成日時:2019年10月28日 22時

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