援軍 ページ20
家康たちが戸田の屋敷についたのは夜明け前。
薄暗い中、用意周到な尭光の兵が二人に襲いかかる。
幾度となく戦場を駆けてきた二人は数で劣っているものの、次々と敵を倒していった。
そして、屋敷に乗り込んだ二人の前に『黒百合』が現れる。
「姉上、貴方を迎えに来た」
家康が優しい声でそう言っても、俯いたままのAの両手には短刀が握られている。
前髪から虚ろな瞳が彼らを睨んでいた。
「あのAはどうすればいい?」
「どうもできない。とにかく正気に戻さなければ」
家康が構えを取る。
それを合図にAは短刀を持った手を大きく振り上げた。
投げつけられた短刀を弾くが、その隙に距離を詰められる。
なんの躊躇いもなく殺しにくるAの姿に家康は胸を痛めた。
こんな冷たい目を向けられたことは無い。
こんな殺意に満ちた目を向けられたことは無い。
「もう止めてくれ姉上ッ!」
この声も、聞こえない。
吹き飛ばされた衝撃で壁に背中を強打する。
痛みで思わず声が漏れると、目の前で短刀を振り上げる姉がいた。
「あねう……」
もう一度呼びかけようとするが、Aの後ろにいた三成が刃を振りかざす。
Aの標的は三成へ移った。
「正気に戻れA。その男は貴様の弟だぞ」
「……」
刃同士が擦り合って、高い金属音を鳴らす。
「何故何も答えない」
「弟だからこそ、邪魔なのだ」
その場をはやし立てたのは織田の援軍を連れた尭光。
傷ついた家康を指差しながら顔を茹で蛸のように赤くした。
「この男がいなければ、真喜姫もAも悲運を辿らずに済んだ!何もかも松平広忠とこの男のせいだ!」
「言わせておけば勝手なことをッ……!」
「さあA、ここは任せてお前は真喜姫の元へ……んぐっ!?」
突然尭光が苦しみ出す。
Aと戦う合間に見えた黒い魔の手が尭光の首を締めていた。
三成はその魔の手に見覚えがあった。
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作者名:三楓 | 作成日時:2019年10月28日 22時