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忌み子とゴクウ2 ページ37

少女は隣村の者で、和尚の使いとしてよく寺を訪れるらしい。

隣村は、なんでも願いが叶うという宝物を有していると有名だった。

それを巡って村同士の争いが起きたこともあったが、今となってはその火も鎮火している。

というのも、村同士が手を組んだからだ。

「村同士の締結は、ゴクウを交互に出すことを条件に結ばれました。だから私はこうしてこちらの村に足を踏み入れることが出来るのです」

けれど、と。
少女、Aは川のほとりに腰を下ろして水面を覗いた。

「ゴクウのことをただの生贄と勘違いする人が多い。だから、あのようにからかわれる。私の村では、本当に神聖なる儀式なのに」

水面に映る自分の顔は歪だ。
Aは腹癒せにその顔面に石を投げつけた。

「それで貴様は、今年のゴクウということか」

「えぇ。あとふた月もすれば村のためにこの身を捧げなければなりません」

まだ遊びたがりの少女は、村のために覚悟を決めている。

いや、洗脳されている(・・・・・・・)と言った方が正しいのかもしれない。

当時のAは、何人ものゴクウを育ててきた和尚や、村人に洗脳されていた。


ゴクウとは神聖なることだと。

ゴクウになることは名誉なことだと。


「……死が名誉なことだと思うのは貴様らか武士くらいだろうな」

佐吉のその言葉は、Aに村の儀式に対する疑問を抱かせ、洗脳された思想を少しずつ解いていった。

それから二人はAが寺へ使いに来る度によく話すようになった。
今日は和尚からこんな話を受けたとAが話せば、「それは全て大人の都合だ」と佐吉が否定する。

佐吉は、子どもながらに誰かと議論することが楽しくて仕方がなかった。

Aは、博識な佐吉の前では子どもに戻ることが出来た。

しかし同時に、考えることもしなかった死への恐怖に怯えることになる。

「ねぇ、佐吉。私ね、まだ死にたくない」

決して、村人には聞かれてはならない本音を、儀式の前日にAは口にした。

涙を堪えながらAが何故私にそんな話をしたのか、今なら分かる。

大人はその願いを叶えてくれない。
だから、他でもない私に願ったのだ。


それを私は、どうしたのだろう。

隣で泣くAに、何も声をかけることが出来ぬまま、とうとう儀式の日を迎えてしまった。

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三楓(プロフ) - ななさん» コメありがとうございます!お褒め頂き光栄です。続編も閲覧していただければ幸いですヽ(*´∀`)ノ (2019年6月16日 13時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - とっても面白かったです!次も楽しみにしてます!!(o^^o) (2019年6月14日 22時) (レス) id: 404dff81b9 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - ヒャッハー(゚ω゚)さん» コメありがとうございます!更に楽しんでいただけるよう頑張ります(*´∀`*) (2019年6月7日 20時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
ヒャッハー(゚ω゚) - いつも見てます(^^) 配信楽しみです (2019年6月7日 7時) (レス) id: c172e98498 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 紫月姫さん» お久しぶりです!コメントありがとうございますヽ(*´∀`)ノ更新できる時はなるべく更新したいと思いますので、またよろしくお願いします! (2019年5月26日 13時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:三楓 | 作成日時:2019年5月26日 13時

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