奇襲 ページ35
深夜。
月が闇夜を照らす。
縁側でひんやりとした風を浴びていた三成は、物音がした方へ視線をやった。
「貴様っ……!」
「お久しぶりです。とは言っても、そこまで言うほどの日は経っていませんが」
闇夜に立つのは『狗』の文字が刻まれた面布を揺らすA。
半身を取り戻しに来たのか。
三成はつかさず刀に手をかけた。
「血の気が多い方ですね。一度は協力関係だった仲でしょう?」
「一方的に裏切った分際で今更何をしに来た」
「何って、宝物を頂戴しに来たんですよ」
「何を言っている。宝物はあの洞穴に」
「ありませんでした。
だって、貴方が盗み出したんですから」
ひょうと冷たい風が鼓膜を叩く。
三成はAの発言を言いがかりだと言い切った。
「私が宝物を盗み出しただと?そんな覚えはない」
「私も信じられませんよ。ですが、宝物を保管していた祠の記憶に貴方が居たんですから間違いはありません」
「貴様、余程私をからかいたいようだな?」
すらりと抜いた刃は月光に照らされ、鈍い光を放つ。
武器も何も持っていないAは、ただその様を見ているだけだった。
「どうした。先日のように亡霊を呼び起こさないのか?」
「あの子たちなら強制成仏しましたよ。私の後ろ盾はもはや何もありません」
「……狂言師が」
三成は背後に降り立った小太郎の存在に気が付き、刃を奮った。
しかし彼は伝説の忍。
そう易々と斬られるわけがない。
「昔のことなので忘れてしまったのでしょうか?でも困るんですよね。宝物が無いと私、視界がこのままなんですよ」
「皮肉なものだな。片方は元に戻りたいと願って、もう片方は戻らなくてもいいと嘆く」
「へぇ、あの子、そんなこと言ってたんですか。戻りたくないと。あの子が拷問を受けていた分、その半分は私にも傷が付くこと、あの子は知らなかったんでしょうか」
Aは無表情のまま、二人の戦いを見守る。
「あの子がお腹を空かせた分、私が摂取して、あの子が痛みを受けた分、私もそれを嫌々分かちあって、もう、半身なんてうんざりなんですよ。いい加減、元の身体に戻りたいんですよ」
Aの掌に爪がくい込む。
感情的になるまいと自身を押さえつけているようだったが、限界が近かった。
「さあ、早く宝物の在り処を吐いてください。貴方もここで死にたくは……」
脅し文句を言いかけたその時、突如その場が眩い光に包まれた。
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三楓(プロフ) - ななさん» コメありがとうございます!お褒め頂き光栄です。続編も閲覧していただければ幸いですヽ(*´∀`)ノ (2019年6月16日 13時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - とっても面白かったです!次も楽しみにしてます!!(o^^o) (2019年6月14日 22時) (レス) id: 404dff81b9 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - ヒャッハー(゚ω゚)さん» コメありがとうございます!更に楽しんでいただけるよう頑張ります(*´∀`*) (2019年6月7日 20時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
ヒャッハー(゚ω゚) - いつも見てます(^^) 配信楽しみです (2019年6月7日 7時) (レス) id: c172e98498 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 紫月姫さん» お久しぶりです!コメントありがとうございますヽ(*´∀`)ノ更新できる時はなるべく更新したいと思いますので、またよろしくお願いします! (2019年5月26日 13時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三楓 | 作成日時:2019年5月26日 13時