違和感 ページ34
小太郎の活躍により開いた祠。
本来であればそこに『先読書』が待ち構えていたはず。
しかし祠の中に『先読書』はなく、空の箱は無様に口を開いているだけだった。
「なんで、なんで無いんですか……」
あると確信していたものが無かった時の焦りは心地いいものでは無い。
祠を開いたせいで役目を失った少女たちの霊は悲しみを抱きながら消え、Aは彼女たちの成仏に目もくれぬまま祠周辺を探し始めた。
しかし、どこを探しても『先読書』はない。
「作り話だったのではないかね?」
久秀に揶揄をかけられ、Aは反射的に「違います」と反論した。
「宝物は存在します。だって、そうじゃないと……」
宝物がないと、自分の身体は元に戻らない。
そもそも宝物の存在が無かったのなら、今までゴクウとして身を捧げてきた少女たちの命はなんだったのか。
Aは再び同じ場所を隈無く探した。
しかし結果は変わらない。
「……先に誰かが入った形跡は無かった。だとすれば」
一度だけ開いた日しか有り得ない。
それこそ、ゴクウとしての役目を放棄したあの日だ。
あの混乱に乗じて誰かが宝物を外に持ち出したのか。
しかし一体誰がそんなことを。
「さて、これからどうする?なんの手掛かりもなしに探すのは酷だろう」
久秀に背後から声をかけられる。
しかしその声はAに届いていなかった。
何故なら彼女は、祠に触れた瞬間、それに刻まれた記憶を見ていたからだ。
独り暗闇の中に放り込まれる少女たち。
いくら嘆いても、誰も助けてはくれない。
暗闇や、洞の中にいる蝙蝠たちに脅え、やがて死に絶える。
生者を憎んだ少女たち。
その一人になりかけた“私”。
“私”が役目を放棄した際、周囲の大人はこぞって“私”を捕まえようとした。
そこに隙が生まれる。
人気がなくなったこの場所に、とある少年が訪れ、『先読書』を持ち出した。
白銀の、顔はぼんやりとしていたが、知った人物だ。
その後、洞はその年の贄を食べることなく閉じてしまった。
祠の記憶はそこで途絶える。
「何故、あの人が……」
祠から手を離したAは、踵を返し洞の出口へ早足で向かう。
「どこへ行く?」
「宝物を持ち出した人物が分かりました。詳細は本人から直接聞くとしましょう」
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三楓(プロフ) - ななさん» コメありがとうございます!お褒め頂き光栄です。続編も閲覧していただければ幸いですヽ(*´∀`)ノ (2019年6月16日 13時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - とっても面白かったです!次も楽しみにしてます!!(o^^o) (2019年6月14日 22時) (レス) id: 404dff81b9 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - ヒャッハー(゚ω゚)さん» コメありがとうございます!更に楽しんでいただけるよう頑張ります(*´∀`*) (2019年6月7日 20時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
ヒャッハー(゚ω゚) - いつも見てます(^^) 配信楽しみです (2019年6月7日 7時) (レス) id: c172e98498 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 紫月姫さん» お久しぶりです!コメントありがとうございますヽ(*´∀`)ノ更新できる時はなるべく更新したいと思いますので、またよろしくお願いします! (2019年5月26日 13時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三楓 | 作成日時:2019年5月26日 13時