プロローグ ページ1
紅の炎と墨色の煙が天守閣を包み込む。
火の粉は猛り狂い、木製で出来た柱を根元から次第に食い尽くしていく。
「(熱いっ……)」
ただ一人生き残った少女は、咳き込みながら僅かな足場を頼りに黒煙を纏って焼失を逃れた。
有害物質を大量に吸い込んだ身体は悲鳴を上げ、湿った土の上に膝を着く。
身体が思うように言うことを聞かないのは煙を吸ったせいだけでは無さそうだ。
彼女の両手を拘束した手枷。
今の今まで自由を奪われてたことが察せられる。
火の海から脱出し、朦朧とした意識の中で新鮮な空気を取り込んでいると、誰かの拍手が鳴った。
忌々しげに眼を動かす。
すると、暗闇の先に初老の男が立っていた。
「まさか拘束されたまま生き延びるとは思わなかった。卿への評価を改めよう」
「……私が死んでしまっては
「なに、この程度で卿が死ねば、守っていた宝物も大したことがなかったと解釈するだけだ」
「はんっ。今回の賊はこれまた随分と老体じゃな。親切心で言う訳では無いが無理はするでないぞ。お前のような奴は棚に並んだ骨董品を眺めながら渋茶でも啜っている方がお似合いじゃ」
「それが助けてもらった相手に対する感謝の言葉かね?」
「助けてもらった覚えはない。私はお前のせいで死にかけたと言っている」
女は口角を引き上げ、煤汚れた顔を肩で拭った。
「お前もあの城の城主のように、私を持て成し、気を良くしたところで宝物の在処を聞き出すか?それとも私が在処を口にするまで拷問し続けるか?」
「出来れば手荒なことは避けたいが」
初老の男は腰に下げた宝刀を抜き取り、女の顎下に冷たい刃を当てた。
「大人しく私と共に来たまえ。卿には重要な役目があるのでね」
「やなこった」
女の返答は早かった。
刹那、刀が振り下ろされる。
死ぬのだと目を瞑った。
反射的に抵抗しようと腕を前に出す。
すると、木製の手枷に刃先が刺さり、ヒビが入った。
ヒビが入った手枷など腕に力を入れてしまえば容易に外れる。
次の一振りが来る前に、牢獄生活で衰えた足にムチを打ち、女はその場から逃げ出した。
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三楓(プロフ) - ななさん» コメありがとうございます!お褒め頂き光栄です。続編も閲覧していただければ幸いですヽ(*´∀`)ノ (2019年6月16日 13時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - とっても面白かったです!次も楽しみにしてます!!(o^^o) (2019年6月14日 22時) (レス) id: 404dff81b9 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - ヒャッハー(゚ω゚)さん» コメありがとうございます!更に楽しんでいただけるよう頑張ります(*´∀`*) (2019年6月7日 20時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
ヒャッハー(゚ω゚) - いつも見てます(^^) 配信楽しみです (2019年6月7日 7時) (レス) id: c172e98498 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 紫月姫さん» お久しぶりです!コメントありがとうございますヽ(*´∀`)ノ更新できる時はなるべく更新したいと思いますので、またよろしくお願いします! (2019年5月26日 13時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三楓 | 作成日時:2019年5月26日 13時