詰まる想い★ ページ10
昼休み。
私はいつものようにAを呼ぶ。
「A」
名を呼ばれたAは、教室にいる時とはまるで違う雰囲気を纏い私の元へ駆けて来た。
本当に分かりやすい奴だ。
その素直な態度を愛らしく思うと同時に、一部こちらを見ていたAのクラスメイトが何やら小声で内緒話をしている。
その光景は見ていて不愉快極まりない。
Aを連れ、私は上の階にある使用されていない教室を目指した。
屋上はやけに人が集まるからな。
大人数はAにとって毒でしかない。
私は誰もいない教室の窓際の席に腰を下ろし、今朝買った紙パックのジュースを飲む。
「それだけで足りる?」
特に昼食らしいものを持参していなかった私に、向かいの席に座ったAは不安そうな顔で尋ねてきた。
「三成君、もっと食べた方がいいと思うよ」
「余計なお世話だ」
「心配して言ってるのに。サンドイッチあげようか?」
「いらん」
渡されたサンドイッチを受け取ることなく、紙パックのジュースを飲み干して、私は向かい側に座ったAをただじっと見ていた。
「A」
「ん?」
「今日は何もされていないか?」
いつものように私はAの様子を伺う。
小学生の時にあった事件以来、Aの性格はすっかり内向的になってしまった。
私以外の他人と話す時は素性を出さぬよう自らを偽って生活している。
そのせいか、『Aは何を頼んでも断らない』という誤った認識が広まり、面倒事を押し付けられがちなのだ。
仕方が無い。
悪いのはAをここまで傷つけた奴らだ。
「今日も大丈夫だったよ」
そうAは笑う。
私だけに見せてくれるその素直な笑みで。
「そうか。それならいい」
ほっとする反面、毎回Aとクラスが違うことにもどかしさを覚えた。
私が直接Aを守れたらいいのだが……生憎そうはいかない。
「何かあればすぐに言え。いいな?」
「うん」
発した言葉が正義感で言ったものでは無いことは分かっていた。
本当は私だけを見ていてほしい。
このまま誰にも心を開かず、私だけを頼ってほしい。
……だが強欲に願えば、私たちの関係は崩れてしまうだろう。
今は、Aの傷が癒えればいいとだけ願う。
今はただ、こうしているだけでも幸せなのだから。
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三楓(プロフ) - なりさん» コメありがとうございます!私の作品を楽しんでいただきとても光栄です。三成様のヤンデレいいですよね(*´∀`*)これから段々病んでいく予定なので楽しみにしていただけると幸いです! (2018年8月15日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
なり - 三楓さんの書かれるお話が本当に大好きです。色々な小説を読んできましたが三楓さんの小説が私にとっては一番楽しく読めるものでした。これからも更新楽しみにしております。三成のヤンデレ小説最高です。 (2018年8月15日 1時) (レス) id: b82bc533b6 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - ryuryuさん» コメありがとうございます(*´∀`*)ちまちま更新ながらも応援して下さりありがとうございます。とても励みになります! (2018年7月30日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 那覇さん» コメありがとうございます(*´∀`*)執筆中はゲシュタルト崩壊して「ん?」となってしまう時がありますが、そのように言って頂けてとても嬉しいです!これからも頑張ります! (2018年7月30日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 梨湖さん» コメありがとうございます(*´∀`*)前作に引き続いてのヤンデレですが(笑)楽しんでいただければ幸いです! (2018年7月30日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三楓 | 作成日時:2018年7月3日 18時