悪天候予報 ページ44
課題を終えた後はテレビを見たり他愛もない話をしたりしていたが、いつの間にか空が赤く染っていた。
「さてと、そろそろ帰ろうかな」
「もう帰るのか?」
「うん。買い出しもしなきゃいけないし」
課題と筆記用具をシンプルなトートバッグの中に片付け、肩にかける。
「今日はありがとう」
「何を言っている。明日もやるぞ」
「これだけやったのに!?」
「当然だ」
終わった冊子を見せつけながら、私は肩を落とした。
これが明日も続くなんて気が遠のきそう。
すると三成君が私から視線を逸らして溜息を吐いた。
「……課題を早めに終わらせれば貴様の我儘一つでも聞いてやろうと思っていたのだが」
「えっ」
「買い物だろうが、水族館、映画館だろうが同行してやっても良かったのだがな。貴様にその気がないのなら仕方な」
「明日も頑張りましょう!」
帰り際になって私のやる気スイッチがオンになる。
なんだ、三成君は初めからそのつもりだったのか!それならそうと早く言ってくれれば良かったのに。
あ、そうか。三成君はツンデレなのか。
……と本人が聞けば手身近にあるもので叩かれそうな発言を心の内で済ませる。
「分かればいい」
鼻で笑う三成君を尻目に私が立ち上がって玄関へ向かおうとした時だった。
彼の家の本棚に目がいく。
普段なら特に気にもしないが、何か違和感を感じた。
ガラス製の扉から中を見てみるが、違和感の正体は分からない。
彼の好みの小説、参考書、アルバム……おかしい所は無いはずだ。
「どうした?」
中々帰ろうとしないどころか、突然本棚を見つめだした私に三成君が不思議そうに尋ねてくる。
「いや、ごめん。気の所為だった」
「そうか?」
三成君と玄関で別れを告げ、彼の家の近くの駐輪場に止めていた自転車に鍵を挿し、スタンドを上げた。
外は相変わらず暑くて、電柱に止まった蝉が羽を震わせ鳴いている。夕暮れ道を少しだけ重いペダルを漕いで進んだ。
漕ぐ度に迫る風が生暖かくてそれだけでも十分に暑さを感じる。
額から汗が流れたが、恐らく暑さだけのせいじゃない。
……うん、きっと気の所為だ。
いや、気の所為じゃないと困る。
三成君が私と同じデザインのアルバムを持っているだなんて。
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三楓(プロフ) - なりさん» コメありがとうございます!私の作品を楽しんでいただきとても光栄です。三成様のヤンデレいいですよね(*´∀`*)これから段々病んでいく予定なので楽しみにしていただけると幸いです! (2018年8月15日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
なり - 三楓さんの書かれるお話が本当に大好きです。色々な小説を読んできましたが三楓さんの小説が私にとっては一番楽しく読めるものでした。これからも更新楽しみにしております。三成のヤンデレ小説最高です。 (2018年8月15日 1時) (レス) id: b82bc533b6 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - ryuryuさん» コメありがとうございます(*´∀`*)ちまちま更新ながらも応援して下さりありがとうございます。とても励みになります! (2018年7月30日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 那覇さん» コメありがとうございます(*´∀`*)執筆中はゲシュタルト崩壊して「ん?」となってしまう時がありますが、そのように言って頂けてとても嬉しいです!これからも頑張ります! (2018年7月30日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 梨湖さん» コメありがとうございます(*´∀`*)前作に引き続いてのヤンデレですが(笑)楽しんでいただければ幸いです! (2018年7月30日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三楓 | 作成日時:2018年7月3日 18時