忌★ ページ34
帰宅した私はそのままソファーに倒れ込む。
未だ頭の中は真っ白のまま。
鈍器で殴られたあとの余韻がまだ残っていた。
「……A」
その名を紡いだ瞬間、一気に胸が苦しくなる。
ガラス製の本棚の中にある本を呆然と見つめた。
それに手を伸ばすが今いる場所から届くはずもなく、力が抜けた腕がソファーからだらんと垂れる。
力が入らない。
何も考えたくない。
とりあえずスマホを弄ってみるが何の気晴らしにもならなかった。
何もしないのなら好機だと不安が押し寄せる。
一体この感情は、どういう意味なのだろうか。
他の奴に『友』として取られることの恐れなのか。
或いは『女』として取られることの恐れなのか。
どちらにしてもそこに『A』が当てはまる。
だが、Aは私を『男』としては見てくれない。
『友』としてしか私を見てくれない。
だったら私のやるべき事は一つなのではないか。
その答えが出た瞬間、私はゆっくりとソファーから体を身体起こして、机の上に置いていたスマホに手を伸ばし、Aとの会話画面を映し出した。
学校のこと、他愛もないこと、どこかへ行こうという遊びの誘い、どの会話も愛おしく、全て私とAだけのものだ。
『男』として見てくれないのなら
『友』としてしか見てくれないのなら
その『友』という枠を私だけが独占しよう。
『恋人』という枠に私だけしか当てはまらぬよう全ての交流を絶たせよう。
そのためにはまず、真田らとの関係を監視する必要がある。
私はソファーから身体を浮かせ、本棚の方へ向かった。
本棚の鍵を開ける。
懐かしいアルバムを取り出す。
その写真に写る一人の子ども。
顔を油性ペンで塗り潰された上に、刃物で切り刻まれ、ほとんど原型を留めていなかった。
「……今度こそ邪魔をするなよ。私とAの平穏のために」
塗り潰した忌々しい顔にカッターナイフを突き立てる。
削れていく写真。
もう切り刻む場所などほとんど残っていないが、私は気が済むまでその写真に鉛色の刃を振りかざした。
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三楓(プロフ) - なりさん» コメありがとうございます!私の作品を楽しんでいただきとても光栄です。三成様のヤンデレいいですよね(*´∀`*)これから段々病んでいく予定なので楽しみにしていただけると幸いです! (2018年8月15日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
なり - 三楓さんの書かれるお話が本当に大好きです。色々な小説を読んできましたが三楓さんの小説が私にとっては一番楽しく読めるものでした。これからも更新楽しみにしております。三成のヤンデレ小説最高です。 (2018年8月15日 1時) (レス) id: b82bc533b6 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - ryuryuさん» コメありがとうございます(*´∀`*)ちまちま更新ながらも応援して下さりありがとうございます。とても励みになります! (2018年7月30日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 那覇さん» コメありがとうございます(*´∀`*)執筆中はゲシュタルト崩壊して「ん?」となってしまう時がありますが、そのように言って頂けてとても嬉しいです!これからも頑張ります! (2018年7月30日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 梨湖さん» コメありがとうございます(*´∀`*)前作に引き続いてのヤンデレですが(笑)楽しんでいただければ幸いです! (2018年7月30日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三楓 | 作成日時:2018年7月3日 18時