検索窓
今日:20 hit、昨日:3 hit、合計:38,818 hit

敗北 ページ17

「勉強会だと?」

「うん。幸村君が三成君も一緒にどうかって」


昼食のパンを食べながら、私は三成君に勉強会の参加の有無を尋ねてみる。

彼の昼食は相変わらずジュースのみ。
男子高校生なんだからもっと食べればいいのに、って思う私は、自分でも母親みたいだと思う。


「Aは行きたいのか?」

「うーん……自分でもよく分からないんだよね。あんまり話したことないけど、わざわざ誘ってくれたんだし、断るのは申し訳ないかなと」

「私が聞いているのはAが行きたいか行きたくないかだ」

「私は三成君の判断に委ねるよ」

「そうか。ならば決まりだ」


三成君は紙パックのジュースを握りつぶし、ゴミ箱にそれを捨てた。


「決まりって?」

「勉強は私が教えてやる。他の奴らなど必要ないだろう。Aが断れないのならば私が断わって来てやる」

「え?今から?ちょ……」


颯爽と教室を出てしまった三成君の背を呆然と見つめながら、私は食べかけのパンを見つめる。

一人だけの教室は悲しいほどに静か。
静寂な空間は好きだったはずなのに、孤独になった途端寂しさが襲う。
それを紛らわすかのように残ったパンを口の中に押し込んだ。

*******

その日の放課後、いつものように教室で三成君を待っていると教室を訪れた幸村君と目が合った。勉強会を断ったことに対する罪悪感があってか、私は彼から目を逸らしてしまう。


「A殿!貴殿も部活でござるか?」


目を逸らされたのに、幸村君は笑顔で私に話しかけてきてくれた。


……なんだか人として負けた気がする。


「ううん。三成君を待っているんだ」

「左様でござったか。A殿は石田殿と仲が宜しいのでござるな!」


幸村君は自分の机からプリントのようなものを取り出して踵を返した。
勉強会のことを責め立てられると思っていた私は、何も言わない彼にもどかしさを覚える。


「幸村君!」


咄嗟に、彼を呼び止めてしまった。
廊下へ向かっていた幸村君はきょとんとした顔でこちらを振り向く。


「なんでござろう?」

「……」


彼の大きな瞳に魅入られ、頭が真っ白になった。口だけが金魚のようにパクパクと動いている。


「……怒ってないの?」


引きつった顔で言えたのがそれだった。
握りしめた拳は無様に震えていて、食い込んだ爪が痛い。

鬱積→←無恣意



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (40 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
44人がお気に入り
設定タグ:戦国BASARA , 石田三成 , 三楓
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

三楓(プロフ) - なりさん» コメありがとうございます!私の作品を楽しんでいただきとても光栄です。三成様のヤンデレいいですよね(*´∀`*)これから段々病んでいく予定なので楽しみにしていただけると幸いです! (2018年8月15日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
なり - 三楓さんの書かれるお話が本当に大好きです。色々な小説を読んできましたが三楓さんの小説が私にとっては一番楽しく読めるものでした。これからも更新楽しみにしております。三成のヤンデレ小説最高です。 (2018年8月15日 1時) (レス) id: b82bc533b6 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - ryuryuさん» コメありがとうございます(*´∀`*)ちまちま更新ながらも応援して下さりありがとうございます。とても励みになります! (2018年7月30日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 那覇さん» コメありがとうございます(*´∀`*)執筆中はゲシュタルト崩壊して「ん?」となってしまう時がありますが、そのように言って頂けてとても嬉しいです!これからも頑張ります! (2018年7月30日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 梨湖さん» コメありがとうございます(*´∀`*)前作に引き続いてのヤンデレですが(笑)楽しんでいただければ幸いです! (2018年7月30日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:三楓 | 作成日時:2018年7月3日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。