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窮屈な空間 ページ2

「Aさん、これを職員室まで運んでおいて貰える?」


クラスメイトに話しかけられ、私の机に置かれたのはクラス全員分のプリント。
本日私と彼は日直で、日直は手分けして提出物を職員室へ運ぶ役割があった。


「俺これからちょっと用事あってさ。だからその……」


彼は教室の後ろの方で、ニヤニヤと笑う男子生徒を見ながら自然に私が受けざる負えない状況を作る。

断ればクラス全体に嫌な空気が流れてしまうことは必然。
結果私の答えなんて、下手な作り笑いをして「いいよ」と言うしかない。


「ほんと?ありがとう!Aさんやっぱ優しいね!」


そうお世辞を言われても、全く嬉しくない。
優しいから断るわけないだろうというプレッシャーを与えてきたのは貴方たちの方じゃないか。

面倒事を人に押し付けて彼らが去ったあと、私はだるさを感じながら腰を上げる。

昔の私なら断れてた。
昔の、真っ直ぐな私なら……。


『嘘つき』


ずきっ、と胸が痛んだ。



なんで今更思い出すの?

もう何年も前のことなのに。



私は机の上に置かれたプリントを握りしめたい衝動に駆られる。


歯がゆい。


気持ち悪い。


もう、忘れたい。




「A」


教室のドアから中を覗いているのは隣のクラスの三成君。
彼を見た瞬間、私の中で渦巻いていたものが少しだけ和らいだ。


「帰るぞ」

「ごめん。プリントを職員室に運ばないといけなくて」

「貸せ」


机の上のプリントを抱え、彼は迷いなく職員室へ向かう。
余計な気を使わせてしまった気がして、私はすぐに彼の後を追いかけた。


「大丈夫。私が持っていくから」

「どうせ押し付けられたのだろう?誰に押し付けられた?」


隣に映ったのはいつもの優しい表情とは違う彼の顔。


その瞳に映るのは殺意に似たものだ。


「押し付けられていないよ。私が運ぶって言った」

「言わざるを得ない状況だった、の間違いだろう。押し付けた奴の名を言え。私が制裁してやる」


彼は私を『嘘つき』と呼ばない。
だから、彼に嘘をつくことは酷く罪悪感を感じる。

この人の前では絶対に正直でいなきゃ。
嫌われないようにしなきゃ。


「……押し付けた訳じゃなくて、その人は他の用事があったから……それで私に頼んだだけ。本当にそれだけ」


言葉に詰まりながらも私は都合のいいように解釈する。

彼はしばらく私の目をじっと見ていたが、やがて理解してくれたのかそれ以上問いただしてはこなかった。

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設定タグ:戦国BASARA , 石田三成 , 三楓
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三楓(プロフ) - なりさん» コメありがとうございます!私の作品を楽しんでいただきとても光栄です。三成様のヤンデレいいですよね(*´∀`*)これから段々病んでいく予定なので楽しみにしていただけると幸いです! (2018年8月15日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
なり - 三楓さんの書かれるお話が本当に大好きです。色々な小説を読んできましたが三楓さんの小説が私にとっては一番楽しく読めるものでした。これからも更新楽しみにしております。三成のヤンデレ小説最高です。 (2018年8月15日 1時) (レス) id: b82bc533b6 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - ryuryuさん» コメありがとうございます(*´∀`*)ちまちま更新ながらも応援して下さりありがとうございます。とても励みになります! (2018年7月30日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 那覇さん» コメありがとうございます(*´∀`*)執筆中はゲシュタルト崩壊して「ん?」となってしまう時がありますが、そのように言って頂けてとても嬉しいです!これからも頑張ります! (2018年7月30日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 梨湖さん» コメありがとうございます(*´∀`*)前作に引き続いてのヤンデレですが(笑)楽しんでいただければ幸いです! (2018年7月30日 23時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:三楓 | 作成日時:2018年7月3日 18時

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