絶対君子【石田三成】参

西陰 ページ35

家康が秀吉を殺していないこと。


三成と家康が争う必要はないこと。


足利義輝を倒さない限り乱世は終わらないこと。


前田家で知った事実を、Aは拙い言葉で刑部に伝えた。

Aの話が終わると刑部はふぅと息を吐く。


刑部「安芸在中、武田の猿(ましら)からも似たようなことを聞いた。帝を倒すために同盟を申し込みたいと」

A「では三成は…！」


左近から三成が甲斐へ向かった話を聞いていたため、Aは次の言葉に期待を抱く。


刑部「三成は直々に断りを入れるため甲斐へ向かった」

A「……え？」

刑部「帝を倒すためではなく、徳川を倒すため(・・・・・・・)改めて同盟を申し込むと。他でもない三成が出した結論よ」

A「何故ですかっ！？東西で争っている場合ではないんです！将軍を倒さないと日ノ本は…」

刑部「太閤を手にかけていないとしても、徳川が豊臣を裏切った事実に変わりなし。徳川とは手を結ばぬ」

A「大谷殿はそれでいいのですか！？」

刑部「それは我の台詞よ。姫君」


ぞくりと背を這うような声がAを慄かせる。


刑部「主は徳川らに騙されておるのだ。主だけではない。日ノ本全てが綺麗ごとの虚言に毒されておる。東西で同盟を結び、帝を倒す？倒したところで次は己が王と名乗り上げ、再び世は乱れるであろう」


Aは眉を潜め、唇を噛んだ。


刑部が全然理解してくれないから歯がゆいのではない。






人の悪しき部分も知っているからこそ、刑部の言葉も一理あると納得してしまった。





刑部「今のところ帝に動きは無し。ならば順序良く潰した方が得策だとは思わぬか？」

同調→←説き伏せよ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す