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飛び立つ雛鳥 見守る親鳥 ページ15

初めて姫様にお会いしたのはもう随分昔の事。

当時戦で夫を亡くし、無事に生んであげられなかった息子まで死なせてしまった私は、身体が弱かった奥方様の代わりに姫様の養育するよう命じられた。


白玉のような柔肌と、片手で収まる程の小さな手足。

赤子だった姫様の世話は大変だったけれど、その成長を見守る度に傷だらけだった心が和らいでいく気がした。


だから姫様を託された時、絶対に守らなければと心に決めた。


私に残されたのは姫様だけだったから。


しかし、雛鳥が巣立ちするように姫様もまた私の元を去って行く日が来てしまう。



その時が永遠に来なければいいのにと何度も思った。



その前に死んでしまえたらと何度も思った。



姫様が戦に行ってしまう度、私は止められなかったことを殿や奥方様にひたすら謝った。

姫様の安全を祈願するために女であることを捨て、この身を仏様に捧げた。

兵士を辞めて、やっと落ち着いたかと思えば、次から次へと姫様は行動を起こしてしまう。




全く、姫様は困った人です。


私はもう走れないというのに。


昔のように身体はいうことを聞かないと言うのに。




A『えい、私は汝たちと避難せず、ここに残りたいです』




……姫様は、再び危険な道を行ってしまわれるのですね。




A『秀吉様へ謝罪できなかった償いも込めて石田殿を支えたい。姫としてではなく、一人の人として』




……姫様は、守りたい方を見つけてしまったのですね。




手を合わせていた私の頬に一筋の涙が伝う。

この成長を素直に喜んでいいのか、それとも別れを惜しむべきなのか。


去り際に聞いた姫様の言葉が今でも耳に残っている。

ただ一言、「また汝たちに会う日を待っています」と。






ええ。私も待っています。

再びA様に会えることを……。





「えい様、お茶が入りました」


共に避難してきた女中がえいを呼ぶ。

しかし、彼女の目に映ったのは仏像の前で横たわったえいの姿。


「えい様!?どうされましたえい様!誰か医者を、医者を呼んでください!」


僅かな意識の中、えいは自分を呼ぶAの声が聞こえたような気がした。

集う者→←桜散る



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三楓(プロフ) - snowさん» コメありがとうございます!楽しんでいただけて幸いです(*´∀`*)ちまちま更新ですが頑張ります! (2018年3月18日 21時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
snow - 最初から見たのですが楽しいです、みてハラハラします!これからも頑張ってください! (2018年3月18日 19時) (レス) id: 336a57e8b1 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 琴音さん» コメありがとうございます(*´∀`*)更に楽しんでいただけるよう頑張ります! (2018年2月4日 14時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
琴音(プロフ) - 続編おめでとうございます!更新頑張って下さい!いつも楽しく見させていただいています! (2018年2月4日 14時) (レス) id: 63b6d3a152 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:三楓 | 作成日時:2018年2月4日 14時

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