桜散る ページ14
数日続いた雨が上がり、地面には薄汚れた花びらが散らばっている。
廊下には若干の湿っぽさが残っているが気になる程ではない。
人影のない御殿に一人、Aの姿があった。
いつも楽し気な声が聞こえていた座敷を覗いても、えいや身の回りの世話をしてくれた女中のほとんどはもういない。
三成「A様」
いつの間にかAの後ろには三成が立っている。
彼は静まり返った御殿を見て唖然とした。
A「人がいなくなるとこうも寂しいものなのですね」
三成「これは一体…」
A「案ずることはありません。皆、一時的に避難しただけですから」
*******
それはAが屋敷に戻って来た時のこと。
雨でびしょ濡れになった彼女は着替えを終え、えいと少し話す時間を設けた。
内容はもちろん、ここを離れるかどうか。
A「えい、私は汝たちと避難せず、ここに残りたいです」
今までえいに我儘を言って迷惑をかけたことは数えきれないほどある。
兵士になりたいと言った件だって何度も反対され、最終的には彼女の意見を聞かず飛び出した。
秀吉を理解したいと思うことばかり考えていたから、えいの思いを察することが出来なかった。
今回も失望させてしまうかもしれない。
ものすごく反対されるかもしれない。
だからこそ、きちんと話し合う必要がある。
えい「……姫様はもう豊臣の姫ではございません。いいえ、最初から豊臣の姫などではないのです。ですからここに留まる必要などないのですよ?」
A「それでも私はここに残りたいのです。秀吉様へ謝罪できなかった償いも込めて石田殿を支えたい。姫としてではなく、一人の人として」
するとえいは僅かに寂しそうな顔をして「そうですか」と呟いた。
それ以上彼女が口出しすることはなく、好きになされよとでもいうようにAの元を去ったのである。
素直と言えば聞こえはいいが、Aからしてみればえいの行動は予想外であまりにも呆気なかった。
きっと、今まで苦労をかけてきたせいで遂に呆れられてしまったのだろう。
40人がお気に入り
「アニメ」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
三楓(プロフ) - snowさん» コメありがとうございます!楽しんでいただけて幸いです(*´∀`*)ちまちま更新ですが頑張ります! (2018年3月18日 21時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
snow - 最初から見たのですが楽しいです、みてハラハラします!これからも頑張ってください! (2018年3月18日 19時) (レス) id: 336a57e8b1 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 琴音さん» コメありがとうございます(*´∀`*)更に楽しんでいただけるよう頑張ります! (2018年2月4日 14時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
琴音(プロフ) - 続編おめでとうございます!更新頑張って下さい!いつも楽しく見させていただいています! (2018年2月4日 14時) (レス) id: 63b6d3a152 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:三楓 | 作成日時:2018年2月4日 14時