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二人の哀悼 ページ13

ねねを奪いさった桜。

あの日を奪いさった桜


秀吉が好きだった桜。

私が嫌いな桜。


そんな桜も今は雨で無残な姿に変わり果てている。

涙を流すように花びらが散っていく。

桜までも秀吉たちの死を嘆くのか。


A「……」


散ることのない作り物の桜に触れる。

また置いて行かれるような気がした。

でも、もう追い掛けるものは何もない。


傘の柄を握りしめ、Aは無言で俯いた。

すると後ろからぱしゃぱしゃと水を跳ねる音が聞こえてくる。

思わず後ろを振り向くと、傘を持たない三成が息を切らしていた。


A「石田殿?」


雨に打たれる三成に傘を貸そうと近寄るが、彼は表情を歪めた後Aをきつく抱きしめた。

着物越しでも背中に爪が食い込んでしまうほどに。

それでもAが「痛い」と声を上げることはなかった。


何故なら彼の肩が震えていたから。

雨で身体が冷えたせいもあるかもしれないが、Aには三成が怯えているように見えた。


三成「……勝手にどこかへ行かないでください」


背中に置かれた三成の手は、必死でAに縋る。


三成「貴方様にまで裏切られると思うと、私は……」


傾けていた傘は何の役にも立たず、Aが着ていた小袖はぐっしょりと濡れてしまった。


刑部『決して、ここを去ろうなど思われるな。それは三成への裏切りに値する』


忠告や警告ではなく、あえて“頼み”と言った刑部の気持ちが何となく分かった。


脅していたのではない。

崇拝していた主の死、同時に友の裏切り…それらで心を打ち砕かれた三成の元を離れるなと頼んでいたのだ。


A「……ごめんなさい。ここに来たら全て吐き出せるような気がして…。まだ、秀吉様にちゃんと謝れていなかったのに、話したい事たくさんあったのにって」


言葉にした瞬間、Aの中でも枷が外れる。

無意識のうちに押さえ込んでしまっていた悲しみが一気に溢れ出した。


A「もっと、素直になればよかった」





雨の中Aは友のために悲涙を、三成は主の為に血涙を流した。






どれだけ悲しもうと、どれだけ嘆こうと、何も変わらないのは分かっている。







過去にはもう浸らないから。









ちゃんと現実を受け止めるから。









今だけ、忘れ形見と共に









汝の死を嘆くことをお許しください。

桜散る→←荒涼



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三楓(プロフ) - snowさん» コメありがとうございます!楽しんでいただけて幸いです(*´∀`*)ちまちま更新ですが頑張ります! (2018年3月18日 21時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
snow - 最初から見たのですが楽しいです、みてハラハラします!これからも頑張ってください! (2018年3月18日 19時) (レス) id: 336a57e8b1 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 琴音さん» コメありがとうございます(*´∀`*)更に楽しんでいただけるよう頑張ります! (2018年2月4日 14時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
琴音(プロフ) - 続編おめでとうございます!更新頑張って下さい!いつも楽しく見させていただいています! (2018年2月4日 14時) (レス) id: 63b6d3a152 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:三楓 | 作成日時:2018年2月4日 14時

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