荒涼 ページ12
えい「姫様、私は近々女中たちを寺へ避難させたいと思います。助殿も共にここを離れましょう?このまま残ってしまえば、石田殿と徳川殿の戦に巻き込まれてしまいます」
A「まだ戦になると決まったわけでは……」
えい「いえ、聞いた話によると徳川殿は各地の大名と手を結び領土拡大を狙っているとか。石田殿がそれを見て黙っているわけがありません。それに……」
えいの表情が曇る。
どうやら次の言葉を躊躇っているようだ。
やがて意を決したのか、Aの目を真っ直ぐに見つめ、告げる。
えい「あの秀吉様を討った徳川殿に、石田殿が勝てるとは到底思えません」
A「そんなこと……」
Aは言葉を詰まらせた。
反論しようとしているのは自分だけだったから。
まさかここにいる全員は三成が負けると思ってるのか。
A「まだ分かりませんよ!秀吉様たちが実は生きていて、豊臣を再興するかもしれません!ですから今まで通り、皆ここで……」
えい「姫様、秀吉様はもういないのです。屋敷の様子を見て分かるように、ここが潮時かと……」
現実に目を背けようとするAにえいは心を鬼にして一気に衰退してしまった豊臣の現状を突きつけた。
*******
縁側で雨を眺めながら、Aは柱に身体を預けていた。
中々現実を受け止めきれないのか、胸の奥のざわめきが濃くなるばかり。
悲しみも苦しみも憤りも、全て混ざったものが一つにまとまって締め付けられるような感覚。
どうせなら雨のように泣いて全部吐き出したいのに、泣けない。
気が付けばAは蛇の目傘を手に取って屋敷を出ようとしていた。
彼女の頭には邪魔な髪をまとめるため、あの桜の髪飾りが付いている。
えい「姫様、どちらへ?」
屋敷からえいが尋ねる。
A「少し散歩をしてきます」
えい「何もこんな雨の日に…」
A「こんな日だから行きたいのです」
寂しげな笑みを浮かべ、Aはただ一人雨の中を歩いて行く。
彼女が向かう先は毎年花見が行われる場所。
本物の桜を見れば、たくさんのことを思い出して泣けるような気がした。
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三楓(プロフ) - snowさん» コメありがとうございます!楽しんでいただけて幸いです(*´∀`*)ちまちま更新ですが頑張ります! (2018年3月18日 21時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
snow - 最初から見たのですが楽しいです、みてハラハラします!これからも頑張ってください! (2018年3月18日 19時) (レス) id: 336a57e8b1 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 琴音さん» コメありがとうございます(*´∀`*)更に楽しんでいただけるよう頑張ります! (2018年2月4日 14時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
琴音(プロフ) - 続編おめでとうございます!更新頑張って下さい!いつも楽しく見させていただいています! (2018年2月4日 14時) (レス) id: 63b6d3a152 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三楓 | 作成日時:2018年2月4日 14時