黄昏時ノ憂愁【猿飛佐助】

予言者 ページ23

伊予河野船、鶴の丸。

奥の部屋で祈祷をしていた先見の巫女、鶴姫はすっと目を開けた。

祈祷の際に閉ざしている扉が開くと、集まっていた伊予河野軍は咄嗟に頭を下げる。


鶴姫「御神託が下りました」


いつも明るい鶴姫の表情は、珍しく険しい。

眉を潜めて固く目をつぶっている。


「姫御前、何か良くない未来でも見えましたか？」


側近の一人が中々お告げを言わない鶴姫の様子を心配して声をかけた。


鶴姫「…悲しき怨念が日ノ本を滅ぼします」


鶴姫は未だかつてない不吉な神託に震えていた。


鶴姫「怨念を浄化しなければ、日ノ本は終わります」


鶴姫の予言が外れたことはない。

故に伊予河野軍はざわめく。


「日ノ本が終わるだと！」

「なんとかなりませぬか姫御前！」


ガヤが飛び交う中、鶴姫は船の上から丘を指さした。


鶴姫「卑弥呼様は仰いました。私に、巫女としての役目を果たせと。日ノ本の明日の為、私がバシッと怨念を払って見せます！」

＊＊＊＊＊＊＊

かすが「待て！待てA！」


日が暮れ、辺りが薄暗くなった。

その闇に紛れるかのようにAは生前と変わらぬ身軽さでかすがを撒く。


佐助「かすが、駄目元で武田領にAを誘いこむ」


かすがの後ろから彼女を追い越した佐助は、なるべく高いところからAを探した。


かすが「まさか武田領の罠にかける気か！」

佐助「以前会った時、Aの足に触れることが出来た。だがさっきはすり抜けた。もしAが自分の死んだ時間帯、つまり黄昏時以外は肉体を持てるとしたら…」

かすが「そんなの無茶だ！呪いを完成させたあれはもうAじゃない！仮に捕まえたとしても私達ではどうすることも…」

佐助「何言ってんのさかすが」


Aを見つけた佐助は、すぐに彼女の後を追った。


佐助「あれは、俺様が助けられなかったAだ。だから今度こそ助けてあげないと。Aは今でも苦しんでんだから」

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