狩り ページ41
大阪城から遠く離れた小川で、昨夜こびり付いた血を洗うA。
『A、早くしなさい』
そう、父親が言っているような気がした。
A「はい。ちちう...」
反射的に返事をして振り向いても、その声が幻聴だと知る。
そうだ。自分はもう、一人なのだ。
小川に浸かる指先は冷たくて、余計に心細さを感じさせる。
そして、これは自業自得だと、水面に映った弱気な顔に冷たい水を浴びさせた。
これから長い旅に出るのだ。
一歩目から弱気などなってたまるか。
A「...よし」
自分に喝を入れ、Aは新たに地に足をつく。
遠くから見えた大阪城が、とても懐かしく思えた。
*******
半兵衛「皆、集まったね」
大広間には多くの武将らが集っていた。
半兵衛「医師が殺されたのは知ってのとおり、犯人はこの間討ち取った武者狩りの娘だ」
その言葉に周囲はざわめく。
半兵衛「恐らくは父親の仇討ちに、近々我ら豊臣を襲って来るに違いない。その時は、万全の体制で敵を迎え撃て」
すると一人の将が手を挙げた。
「敵は生け捕りですか？」
半兵衛が答えようとしたが、上座に座る秀吉が先に口を開いた。
秀吉「どちらでも構わぬ。しかし、奴の首を挙げた者には褒美を与える」
ざわめいていた武将達の指揮が、その言葉で一気に高まった。
話し合いが終わると、我先にと大広間を出て、自分の城へ急いで戻る将も少なくはなかった。
秀吉「時に半兵衛」
半兵衛「なんだい？」
秀吉「三成の姿が見当たらぬようだが。彼奴はどうした」
半兵衛「彼なら、既に武者狩りの行方を追っている。きっと、首を取って戻ってくるはずさ」
豊臣に仇なす者には容赦ない三成の事だ。
やる事も結果を持ち帰るのも早いらしい。
半兵衛「武者狩りの娘の首は、折角だから父親の首と並べて宴会するのもまた一興だろう。それが終われば、滞っていた天下への総仕上げだ」
秀吉「思えば武者狩り風情に随分と手間を取らせた。強いか？武者狩りは」
半兵衛「あぁ、強いさ。だが、娘の方なら三成君で充分だろう」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 52人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
赫夜 - 三楓さんこんにちは赫夜デス夕方までのお仕事ご苦労様デス！！先程仕上がったこちらがわの内容を読ませて頂いたところ主人公ちゃんと三成の関わりが一転に別れて閉まったそうですが不純だらけの乱世で一体どうなって仕舞うのでしょうか…(゜m゜;) (2017年5月21日 15時) (
レス) id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
赫夜 - 三楓さん» 三楓さんおはようございます赫夜デス徹夜までのお仕事お疲れ様でした(*^▽^*)前回仕上がったこちらがわの内容を読ませて頂いたところ三成の頭の中は主人公ちゃんの事でいっぱいだそうですが主人公ちゃん一体何処に居るのでしょうか…‥(-""-;) (2017年5月16日 7時) (レス) id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 名無し737号さん» お久しぶりです！コメありがとうございます(*´∀｀*)ご期待に答えられるような作品にしたいと思います！ (2017年5月14日 22時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 赫夜さん» コメありがとうございます！これからも更新頑張りますね(*´∀｀*) (2017年5月14日 22時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
名無し737号(プロフ) - お久しぶりです。こんばんは。石田さんの愛縛を読ませてもらっていました！風です。今作も、なかなかに良い設定ですね！落ち着きのある石田さんに、魅力を感じました！頑張って下さい！ (2017年5月14日 22時) (レス) id: 3d35d0379b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：三楓 | 作成日時：2017年4月2日 9時
