片割 ページ34
翌朝、Aは医務室で目を覚ました。
昨日の出来事が記憶の中からすっぽりと抜けている。昨夜一度目を覚ました記憶など、脳内のどこにも無かった。
身体を起こさず、寝た状態のまま視線だけを泳がせる。
不意に腕を持ち上げて見ようとするが、重りが付いているかのように重く、持ち上がらない。
それは腕だけではなく、身体全体に言えた。
「おはようございます」
柔らかな表情をした医師が、起きたばかりのAに挨拶をした。
「身体が思うように動かないと思いますが、随分と出血なされたので血が足りていないのです。四、五日安静にしていれば段々回復しますよ」
医師はAの横に座り、腕を手に取る。
しかしAは思わず反射的に腕を引いた。
「包帯を変えるだけですよ」
医師はAから警戒されていると感じたのだろう。
新しく持ってきた包帯を見せ、敵意がないことを示した。
それでもAはしかめっ面のまま医師を睨んでいる。
A「...」
「あ、まだ起きてはいけません」
重たい身体を捻らせ、起き上がろうとするAを抑える医師だが、離れろという意味でか、Aはぐいぐいと医師を押す。
「駄目です!まだ安静にしていなければ...」
A「離、せっ...!」
するとたまたま様子を見に来た三成が、その現場に居合わせた。
三成「A、まだ起きるな」
三成は医師と共に、起き上がるAを抑えつける。
流石に男二人がかりでは歯が立たなかったのか、Aはあっけなく抑えられ、包帯を変えられた。
三成「全く。世話を焼かせる」
今持てる力全てを出し切ったAはぐったりと布団の上で死にかけている。
医師も、大変助かったと三成に頭を下げていた。
三成「すまんが、しばらく席を外せ」
「はい?」
三成「こいつに話がある」
三成は顎を使い、死にかけのAを指した。
「...分かりました。では」
医師は小さく頭下げ、医務室を去っていった。
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赫夜 - 三楓さんこんにちは赫夜デス夕方までのお仕事ご苦労様デス!!先程仕上がったこちらがわの内容を読ませて頂いたところ主人公ちゃんと三成の関わりが一転に別れて閉まったそうですが不純だらけの乱世で一体どうなって仕舞うのでしょうか…(゜m゜;) (2017年5月21日 15時) (レス) id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
赫夜 - 三楓さん» 三楓さんおはようございます赫夜デス徹夜までのお仕事お疲れ様でした(*^▽^*)前回仕上がったこちらがわの内容を読ませて頂いたところ三成の頭の中は主人公ちゃんの事でいっぱいだそうですが主人公ちゃん一体何処に居るのでしょうか…‥(-""-;) (2017年5月16日 7時) (レス) id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 名無し737号さん» お久しぶりです!コメありがとうございます(*´∀`*)ご期待に答えられるような作品にしたいと思います! (2017年5月14日 22時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 赫夜さん» コメありがとうございます!これからも更新頑張りますね(*´∀`*) (2017年5月14日 22時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
名無し737号(プロフ) - お久しぶりです。こんばんは。石田さんの愛縛を読ませてもらっていました!風です。今作も、なかなかに良い設定ですね!落ち着きのある石田さんに、魅力を感じました!頑張って下さい! (2017年5月14日 22時) (レス) id: 3d35d0379b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三楓 | 作成日時:2017年4月2日 9時